数字は正しく読み解かなければ、誤った結論を導くことがある。「思い込み」に騙されやすい数字の事例を紹介しながら、数学的な思考法の大切さを説く一冊。
■シンプソンのパラドックス
「集団全体の性質と、集団を分けた時の性質が異なる」現象は、シンプソンのパラドックスと呼ばれている。例えば「年収1000万円以上、年収500〜1000万円未満、年収500万円以下のどの階層でも、平均所得が上がっている」といった場合、必ずしも景気が回復しているとは限らない。不景気になり、全員の所得が2割減ったとすると、高所得者の中で比較的低所得だった人が高所得者から低所得者のカテゴリに移る場合がある。その結果、低所得者全体の平均を押し上げ、カテゴリの平均所得は上昇する。「それぞれのカテゴリの平均所得が上昇すると同時に、貧しい人の割合が増える」という状態は、実際に不景気が深刻化する局面で起きる事がある。
■待ち行列
行列の平均待ち時間は次の公式で求められる。
平均待ち時間=稼働率/(1−稼働率)×1人あたりの会計時間
稼働率が0.8(10分間で8人が並ぶ)の時、会計に1人1分かかるとすると、平均の待ち時間は、0.8/(1−0.8)×1分=4分
稼働率が1に近づくと、急激に待ち時間が増えてしまう。逆に稼働率を半分(0.4)にすると、0.67分になる。つまり、稼働率は半分にしただけで、待ち時間は1/6になる。
著者 神永 正博
1967年生まれ。東北学院大学工学部教授 日立製作所中央研究所研究員等を経て、現職。2010年度は数理科学研究所客員研究員として南インドに滞在。
週刊ダイヤモンド 2015年 2/7号 「雑誌] 作家 佐藤 優 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 2分 | |
第1章 直感を裏切るデータ | p.9 | 31分 | |
第2章 直感を裏切る確率 | p.67 | 31分 | |
第3章 直感を裏切る図形 | p.125 | 27分 | |
第4章 直感を裏切る論理 | p.175 | 34分 | |
おわりに | p.238 | 1分 |