地球上では、過去5度の大量絶滅が起きている。そして今、私達は自身によって6度目の大絶滅を引き起こしている。世界中で進行している種の絶滅をレポートしている本。
■ビッグファイブ
この地上では五度にわたって生物の大量絶滅が起きた。これらの絶滅は「生物多様性の恐るべき減少」をもたらした。最初の大量絶滅は、大半の生物がまだ水中で暮らしていた約4億5000万年前のオルドビス紀後期。海面の低下が起き、海洋生物種の約85%が死に絶えた。これは氷河作用によって起きたと考えられている。絶滅の最初期頃、二酸化炭素濃度が減少に転じ、気温が下がり、ゴンドワナ大陸が凍結した。
史上最大の大量絶滅は約2億5000万年前のペルム紀末に起き、この時は地上のあらゆる生物が絶滅の危機に瀕した。この場合は、大量の炭素が大気中に排出され、気温が急上昇し、海水温も10℃上がった。海水が酸性化し、溶存酸素量が極端に低下したため、多くの生物は事実上窒息したと考えられる。絶滅が終わる頃には、地上の生物種の約90%が姿を消していた。
一番最近で最も有名な大量絶滅は白亜紀の終わり頃に起きた隕石の衝突を原因とするものである。この時、恐竜など多くの種が消滅した。
人類は未曾有の速度で人口を増やす。人類は生きるために、意識して森林を開拓し、広大な森林は消えていく。そして、ほぼ無意識の内に、生物を大陸間で移動させて生物圏を再構築する。
地下深く埋蔵されたエネルギー源を発見した人類は、大気の組成を変え始める。やがてこれが気候と海水の化学成分の変化につながる。動植物の一部は別の場所に移動してこうした変化に対応する。山に上ったり、極地へ移動したりする。しかし、大半はそうはいかない。最初は数百、やがて数千、何百万種という動植物が、気付けば死の淵に立たされている。絶滅率が急上昇し、生物界が様変わりする。
地球上の生命をこれほど変えた生き物は未だかつてないが、これに匹敵する出来事は過去にも起きている。はるか昔、ごくまれに地球が大激変を起こし、生物の多様性が失われた。太古に起きたこれらの現象の内、5回は規模が大きく、いわゆる「ビッグファイブ」と呼ばれる。そして、今まさに私達自身が同じ現象を新たに引き起こそうとしている。それは「六度目の大絶滅」として知られつつある。
私達が引き起こした絶滅によって私達自身はどうなるのか。1つの可能性は、私達もいずれ自分達が引き起こした「生態系の景観の変化」によって死に絶えるというものだ。人類は進化の拘束から自由になったとはいえ、地球の生態学系と地球化学系には依存したままだ。従って、これらの系を破壊する事によって、私達自身の存続をも危険にさらす。
著者 エリザベス・コルバート
ジャーナリスト 『ニューヨーク・タイムズ』紙記者を経て、1999年より『ニューヨーカー』誌記者。『ニューヨーカー』誌連載記事が、アメリカ科学振興協会(AAAS)賞、ナショナル・アカデミー・コミュニケーション賞をダブル受賞し、のちに単行本The Climate of Manとして刊行。そのほかに、2度の全米雑誌賞、ハインツ賞、グッゲンハイム・フェローシップなどの受賞歴がある。
帯 青山学院大学教授 福岡 伸一 |
日本経済新聞 筑波大学教授 渡辺 政隆 |
帯2 アメリカ合衆国元副大統領 アル・ゴア |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
プロローグ | p.13 | 3分 | |
第1章 パナマの黄金のカエル | p.17 | 17分 | |
第2章 マストドンの臼歯 | p.41 | 22分 | |
第3章 最初にペンギンと呼ばれた鳥 | p.71 | 22分 | |
第4章 古代海洋の覇者 | p.101 | 19分 | |
第5章 人新世へようこそ | p.128 | 17分 | |
第6章 われらをめぐる海 | p.152 | 12分 | |
第7章 海洋の酸性化 | p.169 | 21分 | |
第8章 アンデス山脈の樹林帯 | p.198 | 22分 | |
第9章 乾燥地の島 | p.229 | 17分 | |
第10章 新パンゲア大陸 | p.253 | 22分 | |
第11章 サイの超音波診断 | p.283 | 17分 | |
第12章 狂気の遺伝子 | p.306 | 21分 | |
第13章 羽をもつもの | p.335 | 10分 |
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