「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク(闇の中の対話)」というイベントが日本で始まり、大きな広がりとなるまでの苦労などが書かれた本。イベントを通じて、様々な人に気付きを与えてきた、イベントの効用などが紹介されている。
■ダイアローグ・イン・ザ・ダーク(DID)とは
「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク(暗闇の中の対話)」は、通常のイベントと異なる。イベントに参加するのは、1つのユニットにつき8人のみ。1つのユニットには1人ずつアテンド(案内人)がつき、真っ暗闇の中を歩き回って、様々な体験をする。
この暗闇の中には「見えない」というだけで、豊かな世界が広がっている。例えば、鳥のさえずりや遠くのせせらぎが聞こえたり、土の匂い、森のぬくもりが感じられたり。足下からは葉と葉のこすれる枯れた音が聞こえたり、小枝を踏みつぶす感触などを味わう事もできる。暗闇の中にあるこうした世界を、共に行動している人達と感じたり、体験したりしていく。
DIDでは多くの人が、視覚以外の様々な感覚の可能性と心地良さに気付く。あるいはコミュニケーションの大切さ、人のぬくもりや優しさなどを思い出したりする。
現代では大半の人は、視覚偏重の生活をしている。しかも日常ではあまりにも膨大な情報が流れているので、私達は無意識の内に感性を鈍らせ、五感のセンサーの閾値を上げる事で、多くの情報を切り落とし、認識しなくてもいいようにしている。
それがDIDの暗闇に入り視覚が使えなくなると、自然と他の感覚器官の閾値を下げて、周りの情報を取り入れ始める。こうやって感覚のバランスを整える事で、普段は気付いていなかったような様々な事に気付く。
また助け合いが始まる中で自ずと手を取り合う事も多く、真の意味での触れ合いの効用も感じる。そしてそれが参加者みんなの共感を呼び、他の参加者への配慮へとつながる。
著者 志村 真介
1962年生まれ。ダイアログ・イン・ザ・ダーク 主宰 コンサルティングファームフェロー等を経て1999年からダイアログ・イン・ザ・ダークの日本開催を主宰。 1993年日本経済新聞の記事で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と出会う。感銘を受け発案者ハイネッケに手紙を書き日本開催の承諾を得る。日本初開催後、10年間短期イベントとして開催。視覚障碍者の新しい雇用創出と誰もが対等に対話できるソーシャルプラットフォームを提供。2009年東京外苑前で常設開始。既に体験者は15万人を超える。
帯 文筆家 乙武 洋匡 |
週刊ダイヤモンド 5/2・9合併号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 ダイアログ・イン・ザ・ダークとの衝撃の出会い | p.11 | 8分 | |
第2章 開催まで。六年半の試行錯誤 | p.26 | 14分 | |
第3章 日本版、走り出す | p.52 | 9分 | |
第4章 見えているもの、見えていないもの | p.69 | 10分 | |
第5章 大規模開催から常設化を決心する | p.87 | 14分 | |
第6章 常設化への壁 | p.113 | 4分 | |
第7章 常設化。どん底からの再出発 | p.121 | 17分 | |
第8章 価値を転換させる装置 | p.151 | 8分 | |
第9章 一休みして考えた | p.165 | 19分 | |
おわりに | p.200 | 3分 |