現在、アメリカで大流行している「マインドフルネス」という瞑想について、その有効性や仕組みについて紹介している本。多くの企業で取り組まれているマインドフルネスの事情が書かれています。


■ありのままを受け入れる
マインドフルネスは、心や身体の中で、また私達を取り囲む世界で、現在起こっている事について、最も基礎的なレベルで気づきを深める事だ。これらの動きに気づく事、目の前の現実と違うものを手に入れようと躍起になるよりも、それをありのままに受け入れる事だ。そして、マインドフルネスを養う優れた方法が瞑想だ。

この数年の間、マインドフルネスはビジネスの世界で勢いを増し、ゼネラルミルズやゴールドマン・サックスのような大企業でも実践されている。企業の社会的責任がますます問われる昨今、多くの企業は、従業員や社会の感情的、精神的な幸せにどうすれば貢献できるのかを問い始めている。その答えの1つがマインドフルネスなのだ。

現在，様々な業界において、マインドフルネスの力を認めるトップクラスのプロフェッショナル達によるサブカルチャーが生まれている。彼らは瞑想する事でより効率的で集中力が高まった状態になり、その結果より良い仕事を成し遂げている。マインドフルネスを実践する人々は、感情に左右されない決断が可能になり、より幸福を感じるようになる事で、職場をはじめ人生のあらゆる競争的な局面で優位に立てる。

マインドフルネスを一言で言うと、私達の頭の中に生じる様々な考えを、それに心を動かされる事なく観察する力の事だ。自分の感覚を、苦痛なものでさえも、心を動かされる事なく感じる事のできる能力である。自分の体験に対して自覚的になり、判断を交える事なく観察し、物事に対して恐怖や不安、貪欲からではなく、明晰さと思いやりの心で反応する。

研究によれば、マインドフルネスは私達の免疫系の能力を高め、集中力を向上させ、脳神経の結び付きを再構成する。マインドフルネスを実践すれば私達の心は強くなる。

マインドフルネスを実現するための方法が瞑想だ。マインドフルネス瞑想に必要なのは、安楽な姿勢を取り、自分の考え、感情、感覚を観察する事だけだ。例えば、鼻孔を出入りする呼吸の感覚といったものに集中する。息を吸い込み吐くたびに、身体が上がったり下がったりするのに気づく。心がさまよい出す事は避けようがないが、雑念に気づいたらそれに囚われる事なく、再び呼吸に注意を戻す。最初はこれだけだ。

このような単純な心のエクササイズでさえ、驚くほどの変化を呼び起こす。マインドフルネスの実践は私達の集中力を高め、より効率的に、より幸福にしてくれる。

著者 デイヴィッド・ゲレス

ジャーナリスト 『フィナンシャルタイムズ』に５年間勤務したのち、2013年より『ニューヨークタイムズ』および同紙ブログ「ディールブック」の記者。M&A、コーポレート・ガバナンス、ウォール街の動向などを専門にする。