海外の科学的な研究データに基づき、効果的な教育についてを紹介している本です。最新の海外の教育研究を紹介しながら、本当に効果のある教育とはどのようなものかを解説しています。
■子供を「ご褒美」で釣ってはいけないのか
子供の頃にちゃんと勉強しておく事は、将来の収入を高める事につながる。教育投資への収益率は、株や債券などの金融資産への投資等と比べても高い事が多くの研究で示されている。
しかし、人間には目先の利益が大きく見えてしまう性質があり、そのために遠い将来の事なら冷静に考えて賢い選択ができても、近い将来の事だと、たとえ小さくともすぐに得られる満足を大切にしてしまう。これは子供が勉強する時にも生じている。「目先の利益や満足を優先してしまう」という事は、「目の前にご褒美をぶら下げられると、今、勉強する事の利益や満足が高まり、それを優先する」事でもある。
過去の研究蓄積を見る限り、「ご褒美」の設計を正しく行えば「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせる事なく、かつ貯蓄する事の大切さを学ばせつつ、学力を向上させられるはずである。
■東大生の親の平均年収は約1000万円
文部科学省の調査によると、親の学歴や所得が高い方が、子供の学力が高い事が示されている。「学生生活実態調査」によると、東京大学では、親世帯の平均年収は約1000万円となっており、世帯収入が950万円以上の学生の割合が約57%を占めている。「家計調査」の2人以上勤労者世帯の平均年収が623万円である事から、東大生の親の収入がいかに突出して高いかがわかる。
■学力を決める要因の35%は遺伝、34%は家庭環境
学力には遺伝の影響も大きい事がわかっている。中学3年生時点の子供の学力の35%は遺伝によって説明できる事が明らかになっている。「どういう学校に行っているか」と同じくらい「どういう親のもとに生まれ、育てられたか」という事が学力に与える影響は大きい。
家庭の資源が学力に大きな影響を与える一方で、学校の資源はほとんど統計的に有意な影響を与えなかった事も明らかになっている。
著者 中室 牧子
1975年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 准教授 日本銀行や世界銀行での実務経験を経て2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任し現在に至る。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊エコノミスト 2015年 7/14号 [雑誌] 慶應義塾大学教授 土居 丈朗 |
週刊ダイヤモンド 2015年 7/25 号 [雑誌] 三省堂書店岐阜店店長 渡邉 大介 |
週刊ダイヤモンド 2015年 9/19 号 [雑誌] 作家 佐藤 優 |
週刊ダイヤモンド 2015年11/7号 [雑誌] 花まる学習会代表 高濱 正伸 |
PRESIDENT WOMAN(プレジデント ウーマン)2018年12月号(ニュースがわかる経済入門) |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 4分 | |
第1章 他人の〝成功体験〞はわが子にも活かせるのか? | p.13 | 9分 | |
第2章 子どもを〝ご褒美〞で釣ってはいけないのか? | p.27 | 34分 | |
第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか? | p.83 | 10分 | |
第4章 〝少人数学級〞には効果があるのか? | p.99 | 26分 | |
第5章 〝いい先生〞とはどんな先生なのか? | p.141 | 13分 | |
補論 なぜ、教育に実験が必要なのか | p.162 | 12分 |
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