経済、政治、社会、ビジネスなど、あらゆる分野における権力が衰退している。現在起こっている権力の衰退という変化について、その要因と影響について書かれている本。
■権力の衰退
権力は拡散しつつあり、長い伝統を持つ大きなプレーヤーが、より新しい小さなプレーヤー達から挑戦を受ける事が増えてきている。そして、権力者がその力を使える方法は、これまで以上に制約されている。対抗する国家、企業、政党、社会運動団体、機関、個々のリーダー達が権力をめぐって争っているというのに、権力そのものが衰えつつある。
権力は、挑戦者を妨げる障壁によって揺るぎないものとなる。軍隊や警官隊の武器、資本、資源への排他的なアクセス、宣伝費、専有技術、魅力的なブランド、宗教指導者の道徳的権威や一部の政治家の個人的なカリスマ性など、障壁は、新たな競争相手が重大な挑戦者へと成長するのを妨げるだけでなく、確立されたプレーヤーの支配を一層強いものにしてくれる。しかし、過去30年間にわたって、挑戦者を阻むこの障壁が急激に弱くなっている。
この現象の根底にある原因には、人口動態や経済の変革、ITの拡散だけでなく、政治の変動と期待感や価値観の変化、社会規範などの根深い変化が関連している。
■権力の作用
権力は4つの経路を通じて作用する。
①物理的な力、またはあからさまな強制
実際の強制力の使用、または潜在的強制力
②規範
道徳上の義務と伝統的な義務
③売り込み
説得、人々の好みにいかにアピールするか
④報酬
従う見返りとなる誘因
物理的な力、規範、売り込み、報酬が効果を発揮すれば、権力への挑戦を妨げる障壁は必ず築かれる。
■権力衰退の原因
そしてこの障壁が今、3つの革命の影響によって確実に脆くなっている。
①豊かさ革命(障壁を圧倒する)
支配し、まとめる事をより困難にする。
②移動革命(障壁を迂回する)
囚われの聴衆はいないと認識する。
③意識革命(障壁を弱体化させる)
何も当然と思わない。
3つの革命が進行するにつれて、強制力に頼る組織は自らの領域の支配を維持し、その境界を監視するためだけにかかるコストが増える一方になる。
著者 モイセス・ナイム
カーネギー国際平和財団フェロー MITで理学修士号と博士号を取得後、ベネズエラ開発相や世界銀行理事を経て外交専門誌“フォーリン・ポリシー”編集長を14年間務める。 現在はカーネギー国際平和財団の特別研究員のほか、ニューヨーク・タイムズやル・モンドなど世界中の有力紙に寄稿、ラテンアメリカで国際情勢を扱ったテレビ番組制作に携わり、自ら出演もするなど、精力的な活動を展開している。
帯 米国 元大統領 ビル・クリントン |
帯2 ハフィントンポスト創設者 アリアナ・ハフィントン |
週刊ダイヤモンド 2015年11/7号 [雑誌] BNPパリバ証券経済調査本部長 河野 龍太郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに なぜこの本を書いたのか? | p.8 | 3分 | |
第1章 権力の衰退 | p.12 | 25分 | |
第2章 権力を理解する どのように機能、維持するのか? | p.43 | 19分 | |
第3章 権力はどのように大きくなったのか? | p.67 | 19分 | |
第4章 権力はなぜ優位を失ったのか? | p.91 | 32分 | |
第5章 地滑り的勝利、安定多数、強い政権は、なぜ絶滅の危機にあるのか? | p.131 | 40分 | |
第6章 国防省vs海賊 大規模軍隊の衰退 | p.180 | 28分 | |
第7章 世界の支配者は誰になるのか? 国際政治の新たなプラットフォーム | p.214 | 38分 | |
第8章 ビジネスの変化 企業支配の危機 | p.261 | 44分 | |
第9章 魂と心と脳をめぐる超競争 | p.315 | 33分 | |
第10章 権力の衰退 利益か、損失か? | p.356 | 19分 | |
第11章 権力は衰退している 何をすべきか? | p.379 | 15分 |
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