フィリップ・コトラーが、現在の資本主義が抱える14の問題点を挙げ、その解決策について論じている一冊。
■資本主義の14の欠点
資本主義は世界中のほとんどの国で経済運営の主要な方法となっている。共産主義やファシズムといった他の経済運営体制と比べ、資本主義は経済的成果やイノベーション、価値創造でより優れた結果を生み出せる見込みが高い。しかし、だからといって資本主義の大きな欠点を見過ごすわけにはいかない。これらの欠点にきちんと対処すれば、人々の暮らしを改善する事ができる。
①根強く残る貧困の解決策を全く、またはほとんど示せない。
70億の人類の内、およそ50億人が貧困または極貧状態にある。貧困が生み出すコストは、貧困層全体にかかる生活コストをはるかに上回る。
②所得と資産の不平等を拡大させる。
資本主義の理念は、資本を持つものがそれを元により多くの富を生み出し、その富が結果的にすべての人により多くの仕事と収入をもたらすというものだ。ところが昨今、GDPの成長はもはや貧困の減少を意味しない。金持ちはますます裕福になり、仮にその他の人々に恩恵があったとしても大したものではない。富裕層は議会にロビイストを送り込み、課税の抜け道が生まれるように法律を書かせ、その結果、すでに裕福な人々がさらに得をする。
■資本主義の14の欠点
①根強く残る貧困の解決策を全く、またはほとんど示せない。
②所得と資産の不平等を拡大させる。
③何十億人もの労働者に生活賃金を支払う事ができない。
④自動化の進展に直面し、人間の仕事を十分に確保できなさそうである。
⑤企業活動による社会的費用の一部しか彼らに負担させない。
⑥規制がなければ環境および天然資源を搾取する。
⑦景気循環を生み出し、経済を不安定にする。
⑧個人主義と利己心を重視するため、共同体と共有資源を犠牲にする。
⑨消費者に多額の借金を促し、結果的に製造業主導型経済から金融主導型経済へとシフトさせる。
⑩政治家と企業を一致団結させ、彼らの利益のために大多数の市民の経済的利益を犠牲にする。
⑪長期的な投資計画よりも短期的な利益計画にくみする。
⑫製品の品質や安全性、広告の真実性、反競争的な行為に対する規制を必要とする。
⑬GDPの成長だけを重視しがちになる。
⑭市場の方程式に社会的価値と幸福を持ち込む必要性がある。
著者 フィリップ・コトラー
1931年生まれ。ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール教授 「近代マーケティングの父」として広く知られている。ウォールストリート・ジャーナル紙の最も影響力のある経営思想家ランキングで上位6人の一角を占めている。 顧客のセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを説くSTP理論や、マーケティングの4Pにpeople・processes・physical evidenceを加えた7P理論などが有名。
週刊東洋経済 2015年 12/19号[雑誌] 福山大学経済学部教授 中沢 孝夫 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序 章 資本主義を改善する | p.9 | 17分 | |
第1章 貧困問題は未解決である | p.31 | 14分 | |
第2章 拡大する所得格差 | p.49 | 37分 | |
第3章 搾取される労働者 | p.97 | 17分 | |
第4章 機械が人間の仕事を奪っていく | p.119 | 19分 | |
第5章 誰が社会的費用を払うのか | p.143 | 11分 | |
第6章 環境破壊を防げるのか | p.157 | 14分 | |
第7章 乱高下する市場 | p.175 | 23分 | |
第8章 利己心の是非 | p.205 | 14分 | |
第9章 借金で豊かになれるのか | p.223 | 22分 | |
第10章 政治に歪められる経済 | p.251 | 17分 | |
第11章 短期的利益を重視する弊害 | p.273 | 8分 | |
第12章 マーケティングの功と罪 | p.283 | 11分 | |
第13章 さらなる経済成長は必要なのか | p.297 | 14分 | |
第14章 モノだけでなく幸福も生み出そう | p.315 | 17分 | |
エピローグ | p.337 | 2分 |
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