世界でトップレベルの医大・カロリンスカ医科大学で「学生が選ぶ最優秀教授」にかがやいた名医が、倫理的に生きることの意義と効用を説いた一冊。人に与える人が成功するとし、人にやさしくする事のメリットを説き、やさしさを持つための技術を紹介しています。
■「やさしさ」は技術である
「やさしい人」とは、倫理に従って生きている人である。やさしい人は、常に他人に対する思いやりの心を忘れない。それに「やさしさ」というのが本当はどういうものなのかを理解しているという意味で、非常に賢い。
やさしさは人生で成功するために必要な、唯一にして最も重要な要素だ。だから、どうしても他人にやさしくなれないのであれば、すべては自分自身が成功するためなのだと、自分に言い聞かせればいい。
やさしくあろうといっても、簡単に実行できるとは限らない。例えば、いつも他人の思い通りにさせてやるのは、やさしさではない。やさしさというのは、おおいに判断力を要する資質である。なぜなら、短期的に見れば良くないと思えるような事もしなければならない場合があるからだ。
一般的な通念では、やさしさとは「生まれもった資質・性格」であって。個人の意思でコントロールできるものではない。だがこれは正しくない。やさしさというのは、誰でも意識的に身につける事ができ、一生磨き続ける事ができる「技術」である。
■「良い人間」になれない理由
人が最善の意図があっても最善の行動ができないのは、マイナスの力のせいである。やさしさを磨いていくために重要なのは、自分の行動の原因を理解すること、つまり自分をより知る事だ。良い行いができない時があるのはなぜなのか、その理由がわかりさえすれば、私達は自分を変えるスタートラインに立てる。
①リソース不足
仕事や勉強、家族や友人との付き合い、余暇や自分磨き、これらをすべて一度に、しかもうまくやりくりせねばならず、時間が足りない。これに対処するには、できる限りうまく優先順位をつける能力を養い、燃え尽きてしまわないためにも自分の決断を後悔せずに受け入れる術を学ぶしかない。
②共感力不足
共感とは他人の考え方を理解する力だ。人にやさしくしたいと思うなら、相手が何を必要としているのかを知らなくてはならない。
③思慮不足
誰でもやさしさに欠ける決断をしてしまう事がある。ただ単に考えが足りないのだ。「私が今、相手と同じ状況に置かれていたら、他人から何をしてもらいたいだろう?」と考えれば、もっと賢い決断ができる。
④「他人ごと」主義
「誰もが自分の問題は自分で解決しなければならない」という考え方は間違っている。私達は互いに深く依存しながら生きている。
⑤理想と現実の落差に無自覚であること
「どう生きたいか」と「実際はどう生きているか」の間には、時に深い溝がある。誰でも自分の理想通りに、平穏に生きたいと願っている。そのためにはまず、心の中の倫理規範と実際の行動の間には隔たりがあると自覚する事が大切だ。
⑥生物としての攻撃性
大抵の人は、社会生活を営むためにそれをうまくコントロールしているが、何かのきっかけでたがが外れると、本人も驚くような攻撃性を見せる事がある。重要なのは「自分の中にも攻撃性がある」という事実を受け入れ、それをコントロールする事だ。
⑦無力感
誰でも自分には何もできないと思い、二の足を踏む事はある。だが、私達はいつでも誰にでも、誰かのためにできる事はある。
⑧「誰かがやるだろう」という思い込み
本当は自分でもできるのに、他の人がやってくれるのを期待するという、非常に消極的な態度だ。人は周囲に助けの手を差しのべる人が大勢いればいるほど、自分が助けようとはしなくなる事がわかっている。
⑨選べない選択肢
時にどの道を選ぼうと悪い結果がついてくるという状況に陥る事がある。
これらマイナスの力に対処するには、まずは自分の行動の理由を理解すること。つまり、マイナスの力が働いている時に、そうと気づけるようになる事だ。それができれば問題に対処しやすくなり、意識的な決断ができるようになる。
著者 ステファン・アインホルン
1955年生まれ。カロリンスカ医科大学 分子腫瘍学教授 世界トップレベルの医大として知られるカロリンスカ医科大学の分子腫瘍学教授、がん専門医。 スウェーデンでは「倫理」についての講義・講演の名手としても名高く、1999年にはカロリンスカ医大の「学生が選ぶ最優秀教授」に認定されたほか、数多くの大学や企業、TEDなどでレクチャーを行っている。 倫理的に生きることの意義と効用を説いた『「やさしさ」という技術』は、人口900万人のスウェーデン国内だけで異例の30万部以上を売り上げ、北欧を中心にセンセーションを巻き起こした。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに――「やさしさ」を磨くと人生が変わる | p.6 | 7分 | |
第1講 やさしさと倫理 | p.17 | 12分 | |
第2講 偽りのやさしさ | p.38 | 8分 | |
第3講 やさしさ・勇気・利己主義 | p.51 | 15分 | |
第4講 あなたが「よい人間」になれない理由 | p.76 | 20分 | |
第5講 やさしさは得か? | p.109 | 23分 | |
第6講 「成功」とは何か? | p.148 | 12分 | |
第7講 なぜ、やさしくなると成功するのか? | p.168 | 28分 | |
おわりに――生涯を人間の研究にささげた男が最後に気づいたこと | p.215 | 4分 |
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