AKB48、オリンピック、政治、炎上商法など、様々な話題をもとに、戦略的にどう考えれば良いかを実例として紹介している一冊。
■コモディティ化を乗り切る仕組み
「コモディティ化」とは、特定のジャンルにおいて、どの商品の品質も同じように高まると、顧客にとって代わり映えしなくなってしまう状態を指す。結果として際限のない低価格化競争になるという流れに至る。
「コモディティ化」の波は、「人材」についても押し寄せてきている。「コモディティ化」した人材は、労働市場で価値が低いので、賃金低下、労働の長時間化に陥る事になる。一方で、一部の有用な人材には需要が集中し、コストが高くつく。この波をどう乗り切ればいいか。
「人」そのものを商品として販売し、その商品の個性や特異性で勝負する「タレントビジネス」は、究極の人材ビジネスとも言える。このビジネスには3つの特徴的な「壁」がある。
①どの人材が売れるか分からない
②稼働率(こなせる仕事量)に限界がある
③売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレント側に移る
意思決定はそのレベルに応じて、上から「戦略」「作戦」「戦術」の3段階に分かれている。平均的な日本人が注力しているのは、戦術レベル、せいぜい作戦レベルになりがちだ。日々の業務を頑張ろう、目の前の仕事に打ち込むべしといった、よく強調される美徳は、典型的に戦術レベルの話である。
実際の競争は単純ではない。全く違うルートを開発したり、今まで存在していたルールを変えてしまったりした者が勝利する。つまり、戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をする事なのである。
そういう意味で「戦略」は弱者のためのツールである。同じ戦い方で正面衝突すれば、元々強い者が勝つだろう。だから弱者が勝つためには、戦いのルール自体を変えたり、攻守を逆転したりして、大胆な転換を模索するしかない。
ほとんどの日本のビジネスマンは「高級作業員」に過ぎない。いくら大企業に勤めていようとも、テンプレート化された仕事をより早く、より効率よく行うルーチンワーカーなのだ。だから戦略的思考を実践する機会も演習量も圧倒的に少なく、深刻な問題が発生した時に非定型的で非連続的な解を出す事ができない。
さらに、典型的な手法や古典的な思考による「戦略」は、すぐに共有され容易に模倣されてしまうため、戦略的な意味を失うという「戦略思考のパラドックス」が起きてしまう。本当に効果がある戦略は、通り一遍のありふれた考え方ではなく、少し違う角度から世の中を見たり、もう少し深い部分や裏の面まで追究しようという思考態度の中から生まれてくる。
「戦略的思考」を身につけるのは、意思決定の機会を多く得るために、ビジネススクールなどで行われているのが、ケーススタディを大量にこなすという「擬似トレーニング」だ。身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に「勝つ」方法を考える習慣を身につければいい。
著者 瀧本 哲史
京都大学 客員准教授 大学卒業後、助手経験を経てマッキンゼーに転職。独立後、企業再生として日本交通の再建などを手がける。エンジェル投資家など、多彩な顔を持つ。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊東洋経済 2016年 1/23号[雑誌] |
週刊エコノミスト 2016年01月26日号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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I ヒットコンテンツには「仕掛け」がある | p.13 | 18分 | |
II 労働市場でバカは「評価」されない | p.47 | 24分 | |
III「革新」なきプロジェクトは報われない | p.93 | 20分 | |
IV 情報に潜む「企み」を見抜け | p.131 | 19分 | |
V 人間の「価値」は教育で決まる | p.167 | 23分 | |
VI 政治は社会を動かす「ゲーム」だ | p.211 | 17分 | |
VII 「戦略」を持てない日本人のために | p.243 | 6分 |
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