自らの収入の一部を貧しい人々の支援などに効果的に提供する利他主義者が、ムーブメントになっている。シリコンバレーも注目する利他主義のあり方について、紹介されている一冊。
■効果的な利他主義とは
「効果的な利他主義」という新しいムーブメントが起きている。このムーブメントを支える学生組織が生まれ、ソーシャルメディアで活発な議論が起き、ニューヨークタイムズ紙やワシントンポスト紙もこのムーブメントを取り上げている。
効果的な利他主義は、非常にシンプルな考え方から生まれている。「私達は、自分にできる〈いちばんたくさんのいいこと〉をしなければならない」という考え方である。盗まず、騙さず、傷つけず、殺さないという当たり前のルールに従うだけでは十分ではない。少なくとも、非常な幸運に恵まれ物質的に満たされた生活を送り、自分と家族の衣食住を確保でき、その上さらに時間やお金に恵まれた者にとっては、それだけでは駄目なのである。
私達の余分なリソースのかなりの部分を、世界をよりよい場所にするために使う事が、最低限の倫理的な生活と言える。完全に倫理的な生活を送ろうと思えば、私達にできる最大限の事をしなければならないという事である。効果的な利他主義者の大半は聖人などではなく、普通の人間であるから、最低限の倫理的な生活と、完全な倫理的生活の間のどこかにいる。
■効果的な利他主義の特徴
①慈善団体に活動の効果を開示するように促し、寄付者に本当に慈善団体が世界の役に立っているかという透明性と情報を与えている。
②私達自身の人生に意味を与え、私達の行いをやりがいのあるものにしている。
③理性は私達の生き方を決める上で、決定的な役割を果たすのかといった、哲学と心理学の古典的な問いに新しい光を当てている。
④人間が他者への純粋な思いやりに動かされるという事を証明している。また、私達が倫理の限界を広げられる事、様々な形の利他主義的な行動を選択できる事、自分の行動がどんな結果につながるかを証拠に基づいて理性的に判断できる事を示している。
著者 ピーター・シンガー
1946年生まれ。プリンストン大学教授 哲学者、倫理学者。モナシュ大学教授を経て、現在、プリンストン大学教授。専門は応用倫理学。功利主義の立場から、倫理の問題を探求している。 著書『動物の解放』は、動物の権利やベジタリアニズムの思想的根拠として広く活用されている。ザ・ニューヨーカー誌によって「最も影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、タイム誌によって「世界の最も影響力のある100人」の一人に選ばれている。
日本経済新聞 |
帯 ビル&メリンダ・ゲイツ |
帯2 モデル ローレン・ブッシュ・ローレン |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.7 | 3分 | |
第1章 効果的な利他主義とは? | p.13 | 9分 | |
第2章 ムーブメントが起きている | p.25 | 7分 | |
第3章 質素に暮らす | p.37 | 14分 | |
第4章 お金を稼いで世界を変える | p.56 | 14分 | |
第5章 そのほかの倫理的なキャリア | p.76 | 10分 | |
第6章 身体の一部を提供する | p.90 | 6分 | |
第7章 愛がすべて? | p.101 | 9分 | |
第8章 理性の力 | p.113 | 10分 | |
第9章 利他主義と幸福 | p.127 | 7分 | |
第10章 国内、それとも海外? | p.139 | 8分 | |
第11章 いちばん大きなインパクトを与える | p.150 | 9分 | |
第12章 比較が難しいもの | p.163 | 7分 | |
第13章 動物を救い、自然を守る | p.173 | 9分 | |
第14章 いちばん効果のあるチャリティ | p.186 | 14分 | |
第15章 人類の滅亡を防ぐ | p.206 | 12分 | |
おわりに | p.223 | 3分 |