多くの効果的な利他主義者は、自分の行いを決して犠牲とは言わない。それでも、自分にできる最大の貢献を行うのが何よりの関心事だという点で、彼らは利他主義者である。効果的な利他主義者にはいくつかの共通の価値観がある。

①他の事がすべて同じなら、より苦しみが少なくより幸福な世界の方が、苦しみが多く幸福の少ない世界よりもいい。
こうした価値観に基づき、効果的な利他主義者は極めて貧しい人達を助けるチャリティに向う。同じ金額なら、途上国の極めて貧しい人を助ける方が、はるかに多くの命を救う事ができるからである。

②効果的な利他主義者にとって、いちばんいいことをするのは人生の大切な一部を占めるが、彼らも聖人ではない。何をするにも社会貢献を第一に考えているわけではない。効果的な利他主義者もまた、自分のしたい事をするために時間もお金も割いている。

効果的な利他主義者は様々な背景を持つ人達が実践できるもので、豊かな国に暮らす人も、社会の平均かそれ以下の収入しかない人も実践している。彼らが例えば収入の一割を効果的なチャリティに寄付する事で、購買力で言えばアメリカ人の中央値のわずか1〜2％しか収入のない人達の命を救ったり、彼らの人生を大きく変える事が可能になる。

彼らは要するに、他者を気にかけ、そのために自分の人生を大きく変える事をいとわない人達である。寄付者の情けに訴えるチャリティではなく、費用対効果の高い方法で命を救い苦痛を減らす事を証明できるチャリティに寄付するのが、効果的な利他主義者である。自分に使うお金を削ったり、与えるために稼ぐ事ができるようなキャリアを選んだり、それ以外の方法で「もっとたくさんのいいこと」を行おうとするのも特徴である。

何が彼らをそうさせるのか？

理性は、感情を調節したり、その方向を変えたりする事で、倫理的な行動を促すプロセスに欠かせない役目を果たす事ができる。この理性の力が私達に、より普遍的な視点から、他者の利益と自分の利益が同じ重みを持つと考えさせてくれるなら、効果的な利他主義者がなぜこの原則に従って行動するのかも説明がつく。理性を使って基本的倫理の真理を認識する事は、繁殖適応度を高めるために選択された資質や能力の副産物と言っていい。

理性が利他主義的な動機の決定的な要素かもしれないという仮説は、彼らがその理由を語る時、情緒的な衝動ではなく、理性的な洞察が言葉に表れる事からも裏付けられる。高度な抽象的思考能力が効果的な利他主義につながる。

今、効果的な利他主義がムーブメントになっている理由には、豊かな環境では、人生の意味や充足を見つける事が必要になり、それまでにない目的を人生に与えてくれる効果的な利他主義に向う人が増えている事が考えられる。