どうすれば「定番商品」を生み出す事ができるのか。クリエイティブディレクターの水野学氏などが、長く愛される定番商品のつくり方を、様々な事例をもとに紹介している一冊。
■定番をつくるためには何を意識すれば良いか
デザインには「機能デザイン」と「装飾デザイン」の2種類がある。技術が進歩するにしたがって、必要不可欠な機能デザインは、だんだんと満たされていく。すると、新しい商品をつくるためには、目を引く色や柄、奇抜な形といった装飾デザインで差別化を図る事がメインになっていく。
機能デザインが満たされると、商品はコモディティ化していく。すると、次の段階として、差別化、差異性を求めていく。そのため、そこに装飾を施していく。こうした事が積み重なった結果、デザインという言葉のイメージは「装飾すること」というニュアンスで解釈されてきた。
装飾デザインは大事である。しかし、何かをデザインする時には、基本性能として、機能デザインを満たす事が必須条件である。その上で、装飾デザインを考えていく。機能デザインと装飾デザインの両方が満たされてこそ、本当のデザインである。それを装飾だけだと捉えてしまうと偏ったものが生まれてしまう。当然、長く愛される定番商品にも成り得ない。
■「定番」が求められる時代
現代の日本は、本当に欲しいものが見つかりにくくなってしまった。分かりやすい機能の進化は、技術が成熟化するにつれ、次第に起こりづらくなった。その結果、機能面では各社横並び。本質的な機能とは関係のない、周辺部分の工夫で独自性を探る「差別化」競争を繰り返すことになった。そして、市場には「本当に欲しいと思ってもらえる、ど真ん中の製品」がなくなってしまった。
定番をつくり出すという事は、世の中に必要とされているもののゼロポイント(基準値)を生み出していく事である。「定番商品」とは、そのジャンルにおける「共通認識」のベースとなるものである。
定番商品となるには、機能デザインが満たされている必要がある。また、そのもの「らしさ」を満たしている事が不可欠である。しかし、世の中には「機能」や「らしさ」が欠落した「デザイン」がたくさんある。
そのジャンルの「定番」が明確になり、「ゼロポイント」が定まること、そして、そのゼロポイントができる限り高くなる事は、良いモノに溢れた心豊かな暮らしを生み出す土壌、文化を生み出す事ができる。
著者 水野 学
1972年生まれ。グッドデザインカンパニー 代表 大学卒業後、株式会社パブロプロダクションに入社。その後、株式会社ドラフトを経て、1999年グッドデザインカンパニー設立。ブランドづくりの根本からロゴ、パッケージ、店舗デザインまで、トータルにディレクションを行う。 主な仕事に、NTTドコモ「iD」、「農林水産省」CI、国立新美術館「ゴッホ展」、「多摩美術大学」、「東京ミッドタウン」、「ルミネ」、「adidas」、ユニクロ「UT」、首都高事故削減プロジェクト「TOKYO SMART DRIVER」、森美術館「ル・コルビュジエ展」ほか。
著者 中川 淳1974年生まれ。株式会社中川政七商店 代表取締役社長 プロジェクトマネージャー 大学卒業後、富士通入社。2002年株式会社中川政七商店に入社し、2008年十三代社長に就任。
著者 鈴木啓太1982年生まれ。PRODUCT DESIGN CENTER代表 プロダクトデザイナー 2012年にPRODUCT DESIGN CENTER設立。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊東洋経済 2016年3/5号 [Amazon特集] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 2分 | |
第1章 「定番」が求められる時代 (水野 学) | p.15 | 22分 | |
第2章 世界を変えた定番商品 (水野 学) | p.61 | 13分 | |
第3章 定番の条件 (水野 学) | p.89 | 16分 | |
第4章 定番の「形」はどのようにして生まれるか (鈴木啓太) | p.123 | 18分 | |
第5章 定番をつくるためのプロダクト・マネジメント (米津 雄介) | p.160 | 19分 | |
第6章 定番を生み出すデザインマネジメント (中川 淳) | p.199 | 17分 | |
あとがき | p.235 | 2分 |
ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉) [Amazonへ] |