宇宙に知的生命体の存在を探し続ける天文学者達の活動を追った一冊。
■SETIの凋落
天文学者は何年にもわたって世界中の電波望遠鏡を使って何百という探査を実施し、何千という恒星にアンテナを向けて何百万という狭帯域に耳を澄ませた。だが、異星人や知性やテクノロジーの存在を示す文句なしの証拠はどの探査からも上がらなかった。そのためSETI(地球外知的生命体探査)の関係者はこの分野そのものの存続のため、異星人からの信号を追い求めるのに勝るとも劣らない熱意で資金源を探し続けてきた。
当初は政府が大きな関心を寄せた。SETIはつかの間、米ソが冷戦中に競った科学分野の1つとなった。星同士のコミュニケーションから計り知れないほど貴重な知識が得られ、それを活かせるのではないか。そこへ1971年、NASAのある有力な委員会が、地球から1000光年以内の星から異星人が発する電波通信を本格的に探査するには、集光面積の合計が3〜10㎢になるような巨大電波望遠鏡の一群が必要となり、その建設費用は約100億ドルにのぼるという結論に至った。この数字に政治家や納税者は尻込みし、SETIの長きにわたる凋落が始まった。成果ゼロの時代が延々と続き、国家予算が減っていき、1993年以降、国からの予算は直接的には1ドルも付いていない。
この惑星上の生命には最終期限がある。他の何がどう転んでも、太陽がいつか輝くのをやめるからだ。地球に生命が出現したのは地球が45億年ほど前にできて間もなくの事で、現段階の見積りによると、多様で複雑な多細胞生物に溢れる今の生物圏が微生物だけの世界に逆戻りしてそれっきりになるまで、あと5億年はある。
太陽は今から50億年かそこらで水素の蓄えを使い尽くし、エネルギーがもっと豊富なヘリウムを融合し始めて、徐々に今の大きさの250倍に膨らんで赤色巨星になる。その時、地球が膨らんだ赤い太陽の灼熱の外縁に飲み込まれるのか、それとも比較的無傷で難を逃れて、地殻が溶けてマグマになる程度で済むのか、天文学者の間で議論が続いている。いずれにせよ、そこまで押し詰まった頃の地球の生命には間違いなく何らかの終末がもたらされる。
著者 リー・ ビリングズ
科学・テクノロジー・文化の交錯する領域について執筆するサイエンスライター 「ネイチャー」「ニュー・サイエンティスト」「ポピュラー・メカニクス」「サイエンティフィック・アメリカン」などの各誌に寄稿する。
帯 国立天文台教授 渡部 潤一 |
週刊ダイヤモンド 2016年 4/9 号 [雑誌] (踊る米大統領選) 作家 佐藤 優 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.11 | 9分 | |
1章 存続の望み | p.23 | 16分 | |
2章 ドレイクの蘭 | p.43 | 19分 | |
3章 ある王朝の分裂 | p.66 | 25分 | |
4章 惑星の価値 | p.97 | 22分 | |
5章 ゴールドラッシュのあと | p.124 | 28分 | |
6章 ビッグピクチャー | p.159 | 26分 | |
7章 平衡からの逸脱 | p.191 | 36分 | |
8章 光の乱れ | p.236 | 27分 | |
9章 打ち消す度合い | p.269 | 25分 | |
10章 不毛の大地へ | p.300 | 32分 |
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