系外惑星天文学の興隆
経済的な難題の他にも、SETIが下火になった要因に、系外惑星(太陽以外の恒星の周りを回る惑星)の発見と研究に特化した分野である系外惑星天文学の興隆がある。1990年代の初め頃、電波望遠鏡によって、天文学で革命が始まった。最新機器を使った観測で系外惑星が次々発見され出したのだ。2013年になると、ケプラー宇宙望遠鏡というNASAのミッションの1つだけで、2700個を超える系外惑星らしきものが発見されている。その内ほんのいくつかは、生命が存在できそうな範囲に収まっているものがあった。天文学者は、巨大な宇宙望遠鏡を造って近隣の恒星の周りを回るハビタブル惑星のどれかに生命の兆候を探す事を真剣に議論した。半世紀にわたって成果のなかったSETIは、系外惑星ブームの蚊帳の外だった。地球外生命に関心がある者にとって、参入すべきはSETIではなく系外惑星天文学だった。
ドレイクの式
初めて現代的なSETIを始めた天文学者ドレイクが、他の生命形態がどこかにきっと存在するという確信を得たのは1961年に行われた「グリーンバンク会議」であった。ここでSETIに、太陽以外の恒星の周りに存在する文明を首尾よく検出できる可能性が合理的に存在するかどうかが定量的に示された。
N=R fp ne fl fi fc L
N:検出可能な先進文明の数
R:銀河系に恒星が生まれる速さの平均
fp:惑星形成率
ne:生命に適している率
fl:生命が生まれる率
fi:知性が誕生する率
fc:星間距離を超えてコミュニケーションを図れる知的な異星人の割合
L:技術文明の平均存続期間
ドレイクは、存続期間は重要だと考えた。銀河系は途方もなく大きく、その寿命は驚異的に長い上、光速より速く宇宙空間を進めるものはなさそうだからである。進んだ技術文明の平均寿命が短ければ、接触の機会が事実上ないまま、通信技術を駆使できる段階が終わる。
孤独な地球
系外惑星ブームで得られたデータを統計分析にかけたところ、惑星は多様多種な恒星の周りに、銀河系だけでも何千億と存在していそうだった。そうした惑星のそれなりの割合が、属する惑星系のハビタブルゾーン内を回っているはずである。しかし、ハビタブルかもしれない星はたくさん見つかっているが、知的で技術を持つ生命が見つかりそうな星の数は大して増えていない。この事から広く拡散する強力な技術の発展には大きな壁があると考えられる。その壁を越えるには、地球によく似た惑星が必要かもしれない。