今も政府による検閲と情報統制がされている中国におけるメディアの実態について、紹介されている一冊。中国の情報社会の姿がわかる内容。
■人民日報など庶民は読まない
日本では、中国のメディアといえば、一般に「人民日報」や国営通信社の新華社、全国テレビ放送の中央電子台だと思われている。特に1948年に創刊された「人民日報」は、ほぼ唯一海外で手に入る中国の新聞だった。しかし「人民日報」は「党の舌」として中国共産党の主張を伝える事を目的とした刊行物でしかない。「人民日報」は人々が毎朝お金を出して買い求めるような「新聞」ではなく、「読むべき人」の元に届けられる特殊な新聞である。実際には真面目にそれを定期購読し、内容に目を凝らしているのは、熱心な中国共産党員か、日本メディアを始めとする外国メディア関係者くらいだと言われている。
2014年末時点に中国全土で発行されている新聞は1912紙、その合計発行部数は463億9000万部だったという。この内、一般社会のニュースを取り扱う総合新聞は半分以下の823紙。823紙の内、実際に独自取材に夜ニュース記事を掲載しているものはほんの一部であり、発行範囲が狭くなればなるほど国営通信社の新華社や「人民日報」などの記事を転載することで紙面を埋める。そのほとんどが政府機関が発行する機関紙で、「報道」を目的としたものではないからだ。
政府による情報規制や統制がある中で、中国のメディア関係者は常に次のステップを模索してきた。メディアの主流から落ちこぼれてしまったように見えた人が、時に華麗に復活を遂げ、自らが信じる情報を流し続ける。
SNS時代に入って明らかなには、人々が求め、彼らに情報を与えてくれた記事は、必ずと言ってよいほど多くの人達にシェアされていくということだ。それが当局によって、一時間後、30分後、あるいは10秒後に消されようとも、人々はシェアをして、1人でも多くの人に届けようとする。中産階級が記事を読みながら声を上げるようになったのだ。
著者 ふるまい よしこ
フリーランスライター 1989年香港中文大学で広東語を学んだ後、現地で雑誌編集者を経て独立。香港に14年、北京に13年半暮らし、日本では報道されない現地の社会事情を日本のメディアに寄稿。 2015年にいったん帰国。日中の認識のズレにポイントを置きながら中国事情の分析を発信している。
帯 ジャーナリスト 津田 大介 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序 章 プロパガンダメディアの変遷 | p.21 | 13分 | |
第一章 「中産階級」がつくる新しい時代 | p.43 | 14分 | |
第二章 情報統制の限界 | p.67 | 10分 | |
第三章 メディアの市場化と権利意識の目覚め | p.85 | 13分 | |
第四章 海外情報の影響・経済メディアの活躍 | p.107 | 12分 | |
第五章 「つながり」から「社会参加」へ | p.127 | 13分 | |
第六章 SNSがつなぐ記憶と人々 | p.149 | 10分 | |
第七章 狙い撃ちされた知識人とメディア | p.167 | 16分 | |
第八章 スマホが書き換えたメディア地図 | p.195 | 10分 | |
第九章 巨大企業は味方か敵か | p.213 | 12分 | |
あとがき | p.234 | 2分 |