秩父で造ることにこだわったウイスキー「ベンチャーウイスキー」、馬具職人がつくるカバン・バッグ「ソメスサドル」。世界的にも高い評価を受けている2つの小さなブランドの物語を通して、ニッチの中でトップをとるための戦略について紹介している一冊。
■日本唯一のウイスキー専業メーカー
2006年、肥土伊知郎氏がマスター・ブレンダーとして世に送り出した「イチローズモルト カードシリーズ」が、ウイスキーの本場イギリスの専門誌「ウイスキー・マガジン」で、日本産ウイスキーとして最高得点「ゴールドアワード」を獲得。日本唯一のウイスキー専業メーカーとして、埼玉県秩父市にて、自ら設計した小型の蒸留所での操業を開始した。
肥土氏が立ち上げたベンチャーウイスキーは、創業10数年の小規模な蒸留所である。創業当時は肥土社長がものづくりと営業を一人でこなしていた。肥土社長は造り酒屋の長男。東京農業大学醸造学科卒業後、サントリーで営業職を経験する。1997年、経営がうまくいっていない家業を手伝うことになったが、日本酒の生産設備への過剰投資が原因で、2000年に事実上倒産した。
その後、民事再生によって再生会社の社長に就任するにあたって、採算性の悪いウイスキー事業からの撤退をスポンサー企業から支持された。倉庫に眠っている400樽に及ぶ原酒も買い手が見つからない場合は廃棄すると言い渡された。
小さくても勝ち残る会社の特徴には次の3つがある。
①どんな大きな壁でも正面突破してしまう推進力
②時代を読み解く鋭い嗅覚と広い視野
③狂信的とも言えるものづくりへの執念
この3点をまとめると「自分たちにしか出せない味わいを見つけ、さらに意味づけをして徹底的にこだわり抜く」というイノベーティブな姿勢にほかならない。
付加価値を高め、ブランド力を向上させていくと、価値が価格を超えてくるタイミングがある。例えば、納品まで3年待つ人や、価格を度外視してでも買いたいという人が現れたり、その商品が生まれる聖地に足を運びたいと思う人が増えていく状態になる。
このような、ある特定の一人に熱狂的にファンになってもらう、ということがニッチ・トップ戦略の真髄である。
著者 山本 聖
一般社団法人地球MD代表理事 独立行政法人中小企業基盤整備機構プロジェクトマネージャー 元小田急百貨店商品統括部マーチャンダイザー。小田急百貨店時代は小売業主体のマーチャンダイジング(商品政策)による自主編集・単品売場型の差異化商品開発と、「大手外資ブランドに負けない! 」をテーマに国内ブランドの発掘と育成に努める。 マザーハウスや今治タオルにいち早く着目したカリスマバイヤーとして業界では有名。産官学連携によるメイドインジャパンのブランディング活動での功績が評価され、2008年に中小機構本部プロジェクトマネージャーに就任、半官半民の見地で全国の中小企業の支援活動を開始。 2010年、小田急百貨店を退社し、現職。 「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」の育成サポートメンバーでもある。
帯 法政大学大学院教授 坂本 光司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.4 | 2分 | |
第1章 ベンチャーウイスキー(埼玉県秩父市) | p.13 | 43分 | |
第2章 ソメスサドル(北海道歌志内市) | p.91 | 49分 | |
第3章 地元に愛され、独り立ちするブランドづくり10カ条 | p.178 | 37分 |
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