新興国の事業立ち上げを担当してきたトヨタ自動車の元専務が、これまでの海外ビジネス経験を語った一冊。新興国でビジネスを展開するためのポイントが紹介されています。
■新興国ビジネスを成功へと導く12のポイント
①現地社会と利害を共有できる、インサイダー化を目指す
その国への投資が単に輸出拠点問いう視点だけでは、現地に根を張った市民権ある安定的な事業運営はできない。大切なのは現地社会から「徳のある企業」として評価を得られるように努力することだ。雇用の確保、技術移転、新商品の導入、地産地消、現地化への推進、社会貢献活動など。そして、現地社会に興味を持ち、好きになることだ。
②ビジネスだけにとどまらない、真のパートナーシップを築く
新興国の事業体は合弁方式が多い。トヨタの場合、生産事業体はトヨタが多数資本、販売事業体は現地パートナーが多数資本というのが一般的。そして出資比率以上に重要なことはパートナーとの信頼関係だ。合弁企業の発展、取引の拡大、産業の育成など、それぞれのパートナーとの目標が共有化されれば、双方の役割は異なるものの効果的な連携プレーができる。
③現地人材の育成とオペレーションの自立化で立派な土台を作る
問題となるのが日本と現地の役割分担、決裁権限の明確化。現地の人間にわかりやすい透明性のあるルール作りを心がけなければならない。
新興国は不確定要素が多く、混沌としている。ただし確実なことは人口が増え続け、経済活動の山や谷はあるものの、右肩上がりの成長トレンドにあることだ。長期にわたる内戦など一部例外的に停滞している国もあるが、総じて経済規模は拡大している。
経済活動の山谷をリスクという概念で捉えるのではなく、成長過程のプロセスと捉えられるかどうかが、新興国ビジネスの成否を分ける。市場規模が拡大していく中で多様な変化があることは、多彩な新規ビジネスのチャンスに溢れていると言える。
著者 岡部 聰
1947年生まれ。トヨタ自動車 元専務取締役 大学卒業後、1971年トヨタ自動車販売株式会社(現トヨタ自動車株式会社)入社。海外市場調査を担当。以後一貫して新興国でのビジネス展開に携わる。 2005年専務取締役、アフリカ・中南米を含む新興国全体を担当。2012年取締役退任、エグゼクティブアドバイザーに就任。 2012年東海東京証券株式会社取締役副会長。現在、東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社顧問、川崎汽船株式会社社外取締役。
日経ビジネスアソシエ2016年10月号 |
帯 トヨタ自動車 元会長 奥田 碩 |
日経ビジネス |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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プロローグ | p.9 | 3分 | |
第1章 私をパイオニアワークに駆り立てた“野外科学”とは? | p.15 | 8分 | |
第2章 悪路と難所だらけの新興国を中心とした海外事業展開 | p.31 | 35分 | |
第3章 新興国ビジネスの成否は現地パートナーで決まる! | p.99 | 10分 | |
第4章 新興国ビジネスの現場から学んだ12のポイント | p.119 | 19分 | |
第5章 パイオニアワークの原点は、ヒマラヤにあった | p.156 | 18分 | |
第6章 パイオニアワークの扉を開く方法 | p.191 | 7分 | |
おわりに | p.204 | 4分 |