グローバル市場で成功するためには「ルール」を主導的に作る側にならなければならない。日本企業が苦手な世界でのルールづくりにおいて、企業がすべきアプローチ方法を紹介している一冊。
■日本企業に不足している意識
革新的な技術は得てして、既存の市場のプレーヤーを無価値化すること、規制を無意味化することを伴う。しかし、既得権益の抵抗や、規制当局との議論を制することができないために市場化に失敗する例は少なくない。
このような状況に陥ってしまう理由は、ルールメイキング戦略という戦略思考の欠落と、ルールメイキング戦略をやり遂げるために不可欠な組織体制の構築や戦略的な経費予算の資源配分が不十分なことに起因している。
日本企業はルールに対して基本的に受け身だ。「ルールは政府がつくるもの」という意識であるため、ルールの変化に迅速に適応することを初動とする経営姿勢が染み込んでしまっている。結果、ルールを構想する段階から能動的に参画する意識が欠落し続けている。一方、欧米企業はより良い世界を形づくる上でルールは常に革新されていくものであるという前提に立ち、企業と政府の立場に関係なく、あるべきルールを議論することは責務であるという認識を持っている。このマインドセットの違いが日本企業と欧米企業の成長速度の差を生み出している。
国内にロビイング文化が希薄な日本の企業は、海外でのルールづくりに参画することにどうしても躊躇してしまいがちだが、主導権を握らなければならない。
著者 國分 俊史
多摩大学大学院教授 多摩大学ルール形成戦略研究所所長。デロイトトーマツコンサルティング執行役員。パシフィックフォーラム戦略国際問題研究所(CSIS)シニアフェロー。
著者 福田 峰之多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授 神奈川県第8選挙区(横浜市緑区・青葉区)衆議院議員。前内閣府大臣補佐官。自由民主党知的財産戦略調査会常任幹事兼コンテンツ小委員会事務局長
著者 角南 篤多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授 政策研究大学院大学副学長。内閣府参与(科学技術・イノベーション政策担当)
帯 評論家 寺島 実郎 |
PRESIDENT (プレジデント) 2017年1/2号(医者の診断のウラ側) 東京大学大学院経済学研究科教授 柳川 範之 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.1 | 5分 | |
第1章 なぜ今、ルールメイキング戦略なのか | p.19 | 15分 | |
第2章 ルールで市場を囲い込む欧米、取り残される日本 | p.41 | 13分 | |
第3章 企業経営における標準化とルールメイキング戦略 | p.61 | 17分 | |
第4章 経営戦略としてのルールメイキング戦略の方法論 | p.87 | 15分 | |
第5章 社会課題を成長機会に転じるルールメイキング戦略 | p.109 | 16分 | |
第6章 安全保障経済政策とグローバルルールメイキング | p.133 | 20分 | |
第7章 科学技術外交と国際ルールメイキング | p.163 | 15分 | |
第8章 日本の政治家が世界でルールメイキング力を高めるために必要な施策 | p.185 | 12分 | |
第9章 ルールメイキング能力を担う「イノベーターシップ」 | p.203 | 15分 | |
第10章 ルールメイキング戦略を組織的に推進する「コーポレート・アフェアーズ」機能 | p.225 | 13分 | |
あとがき | p.245 | 5分 |