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2017/02/21更新

スタートアップ大国イスラエルの秘密

120分

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グローバル企業のR&Dが起業家を循環させる

イスラエルはその歴史的な背景から、周りを敵対する国に囲まれている上に、自国内で石油などの資源が出ない。そのため外貨を稼ぐ手段として、頭脳を強化して、R&Dに特化した国づくりを進めてきた。そのため、スタートアップがたくさんあるだけでなく、グローバルに展開するテクノロジー企業の研究・開発期間が300拠点以上存在する。

多くのグローバル企業が拠点を構える最大の要因は、高スペックの若い人材を確保できる点にある。さらにイスラエルには、新しい技術、発明の出所として実績が数多くある。そのため、研究、技術開発のアイデアが豊富に出てくる土壌がある。

こうしたグローバル企業が多数あることは、イスラエル人材にとって多くのプラス効果をもたらす。1つ目は、徴兵後すぐにグローバル企業の最前線の研究・開発に触れることができ、イスラエルの人材の研究・開発能力をさらに高めることができる。2つ目は、こうした企業の大半は世界展開しているので、最初から世界展開を考えて研究・開発するようになり、グローバルな視野でモノを考えられるようになる。将来、起業する際にも、世界展開を考えてプロダクト開発をしやすくなる。

イスラエルで「成功した起業家」は、起業した会社をグローバル企業に売却したり、IPOしていく。一方で、イスラエルでは毎年800〜1000社のスタートアップが生まれるが、その内3〜4割は企業活動を終了していく。「失敗した起業家」たちは、その後グローバル企業のR&Dに容易に戻ることができる。グローバル企業が「失敗した起業家」の受け皿として機能し、人材の需給面で支え、人材の流動性の高さを支える。起業に失敗してもまたグローバル企業のR&Dで働ける環境が整っているため、リスクがあっても起業しやすい。

投資が集まる仕組み

イスラエルには、世界各国から投資が行われている。投資金額は、2015年には5000億円を超える。2010年以降は500〜700社程度に投資されている。これほどの投資が集まり続ける理由の1つは、国内の多数の投資先が存在し続けることが挙げられる。イスラエルの場合、毎年800〜1000社以上の企業が新たに生まれるため、新しい投資対象が増え続ける環境にある。もう1つの理由は、投資した会社が次々にイグジットされていく点だ。毎年80〜100社程度の企業が買収されていく。投資家にしっかりと投資資金が還流していく仕組みができあがっているのである。

こうしたイグジット金額の十数%は税金として国に納められる。教育や徴兵制、グローバル企業の拠点誘致、投資の優遇税制などのインフラを整えた国へお金が還流していく。こうしたエコシステムが構築されている点がスタートアップ大国イスラエルの本質である。