遺伝子発現の変化を様々な希少疾患の事例をもとに紹介し、最新の科学によって判明してきた遺伝子のメカニズムを解説している一冊。
■遺伝子の発現は変化する
メンデルの遺伝法則によって、遺伝子は一対であり、片方の遺伝子がもう片方の遺伝子より優性であれば、その形質がもたらされる、と考えられてきた。そして、それに対応して一対の遺伝子の両方が劣性遺伝子であると、一般的でない青い瞳や「ヒッチハイカーの親指」がもたらされる、と考えられた。しかし、遺伝は常にそのような形で生じない。メンデルは重大なことを見過ごしてしまった。それは「表現度の差」である。これこそが、同じ遺伝子が非常に異なる方法で人々の人生に影響を与えかねない理由である。同じ遺伝子が、異なる人に対しても常に同じように作用するとは限らない。
なぜ表現度には差があるのか。その答えは、遺伝子は僕らの人生で白か黒かの反応を見せるわけではないことにある。遺伝子は不動であるかのように見えても、遺伝子が発現する方法は、不動どころではない。今日では、表現度の差を考慮しながらフルカラーで物事を見ることの重要さについて、理解が進みはじめている。
「遺伝によって受け継ぐものは完全に決まってしまったのだから、あなたが何をもらったか、何を子孫に与えるかについては、選択の余地はない」というのは、完全に誤っている。
DNAは常に改変され続けている。それは何千という小さな電球の個々のスイッチが、やっていること、見ていること、感じていることに応じて、オンになったり、オフになったりするようなものだ。このプロセスは、どこでどのように暮らすか、どんなストレスを被るか、何を食べるかなどによって仲介され、調整される。そして、これらはすべて変えることができる。
著者 シャロン・モアレム
科学者、内科医 ノンフィクション作家 研究と著作を通じ、医学、遺伝学、歴史、生物学をブレンドするという新しく魅力的な方法によって、人間の身体が機能する仕組みを説いている。 その科学的な研究は、「スーパーバグ」すなわち薬が効かない多剤耐性微生物に対する画期的な抗生物質「シデロシリン」の発見につながった。また、バイオテクノロジーやヒトの健康に関する特許を世界中で25件以上取得していて、バイオテクノロジー企業2社の共同創設者でもある。 もともとはアルツハイマー病による祖父の死と遺伝病の関係を疑ったことをきっかけに医学研究の道に進んだ人物で、同病の遺伝的関係の新発見で知られるようになった。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 「顔」からゲノムを解き明かす | p.1 | 26分 | |
第2章 遺伝子が悲劇をもたらすとき | p.35 | 23分 | |
第3章 運命を変える「遺伝子スイッチ」 | p.65 | 15分 | |
第4章 たった1個の書き間違い、ほんの少しの環境の違い | p.85 | 24分 | |
第5章 遺伝子の口に合わない食事 | p.117 | 27分 | |
第6章 薬が効くかどうかも遺伝子次第 | p.153 | 17分 | |
第7章 右か左か、それが大事だ | p.175 | 17分 | |
第8章 ぼくらはみんな「突然変異」を抱えてる | p.197 | 17分 | |
第9章 それでもゲノムをハックする? | p.219 | 23分 | |
第10章 染色体を見ても性別が決められない? | p.249 | 23分 | |
第11章 遺伝子とともに生きる | p.279 | 26分 | |
エピローグ | p.313 | 2分 |
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