いつも忙しくしている人こそ、心からの休養が必要である。禅宗の僧侶である著者が、禅の教えを通して、休養の取り方を紹介している一冊。
■一旦、立ち止まって、静かに坐る
禅には「七走一坐」という言葉がある。7回走ったら、一旦立ち止まって、静かに坐りなさい、ということである。そうすることで、自分が走っている方向は正しいのか、自分にふさわしい走り方をしているのかが見えてくる。つまり、自分を見つめ直すことができる。
走り続けていれば心も身体も疲れてくる。疲れている心では自分を正しく見つめ直すことはできない。立ち止まること、自分を休ませることは、フレッシュな瑞々しい心で自分を見つめるための大前提だといっていい。
走り続けていると、ともすれば惰性で歩を前に進めるということになっていたりする。それは確かな一歩と言えるか。時に自分を休ませて力をため、そこから踏み出す一歩こそ、確かな力強い一歩ではないか。そんな一歩ずつを踏みしめていくことで、人生は幸福で充実したものになる。
■自分の足元を見つめる
「脚下照顧」という禅語がある。「足元を見つめなさい」という意味である。日常の所作でいえば、脱いだ履き物をきちんと揃えなさい、ということ。履き物を揃えるか、揃えないか、というそのことに、実は心がそのまま映し出されている。
足元を見つめるということは、立ち止まって、自分の立ち位置を確認し、その瞬間にやるべきことを見定め、正しく把握するということ。履き物を脱いだ瞬間にやるべきことは、当然、その履き物を揃えるということではないか。面倒臭いからなどの理由で脱ぎっぱなしにするのは、やるべきことが見定められず、把握できていないということに他ならない。
今、その瞬間にやるべきことを置き去りにして、次の瞬間はやるべきことをやるというわけにはいかない。人生は瞬間、瞬間の積み重ねだから、どんな瞬間も、歪んだ取り組み方、歪んだ向き合い方をしたら、歪んだ人生が紡がれていくことにもなる。どんな時も脱いだ履き物はきちんと揃える。いつでも、どこででも、やるべきことに心を注ぐこと。
著者 枡野 俊明
1953年生まれ。曹洞宗 徳雄山建功寺 住職 多摩美術大学 環境デザイン学科 教授 大学卒業後、大本山總持寺にて修行。現在曹洞宗徳雄山建功寺住職。 多摩美術大学環境デザイン学科教授。 庭園デザイナーとしての活躍もめざましく、禅の思想を取り入れた庭園デザインは国内外で高い評価を得る。 芸術選奨文部大臣新人賞、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章受賞。 2006年ニューズウィーク日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 1分 | |
第1章 立ち止まる―走り続けるだけが人生ではない | p.11 | 20分 | |
第2章 自分を休ませる―自らを見つめる時間をつくる | p.53 | 21分 | |
第3章 心を整える―過去や未来ではなく「いま」を生きる | p.97 | 21分 | |
第4章 一歩踏み出す―新しい自分を始めるために | p.141 | 23分 |