核となるコンセプト
2人は優秀なエンジニアのブレチャージクを引き入れ、本物の起業アイデアを考え始めた。結局、エアベッド&ブレックファストを立ち上げることにした。国中で開かれる大規模な会議の期間中に泊まる場所を探すためのサービスにしよう。
新しいサービスを発表する理想的な舞台もあった。テクノロジー業界最大のイベント、サウス・バイ・サウスウェストだ。しかし、サウスバイの後、サイトへのアクセスはぱったり止まった。落ち込んでいたが、その年は大統領選挙の年で、民主党大会が開かれる予定になっていた。もう一度試してみることにした。この時期に、新生エアベッド&ブレックファストの壮大な将来像が見えてきた。大規模なカンファレンスに的を絞るより、ホテル予約と同じくらい簡単に誰かの部屋を予約できるようなウェブサイトの方がいい。それは、今のAirbnbの核になるコンセプトだった。
風前の灯
3人はプロダクトの改良を続けた。民主党大会が近く頃に、サイトでスムーズに支払いができるようになり、レビューシステムも立ち上がり、新しい宣伝文句も決めていた。「地元に密着した旅行体験を」
しかし問題があった。宿の供給だ。誰も予約しないのに、部屋を貸し出そうという人はいない。部屋の掲載がほとんどなければ、誰もサイトを使おうとは思わない。そこで地元の小さなブログに話題を提供すると、ドミノ効果が起きた。話題が人気ブログに取り上げられ、地元紙に掲載され、全国紙で取り上げられた。しかしその成功もまた、つかの間だった。予約ははいったしマスコミにも注目されたが、党大会が終わるとトラフィックは消え失せた。
宇宙船が飛び立った
ローンチが終わり、一文無しになり、借金を背負い、サイトは閑散としていた。2008年11月のある夜、Yコンビネーターに応募してみろと言われた。面接後、3人は6%の株式と引き換えに2万ドルの種銭を受け取り、Yコンビネーターに入学した。チェスキーたちは、ユーザーに会い、ホストの写真が下手だという大きな弱点を発見した。そこでプロの写真家をタダで送り込んだ。さらに朝食を出さなくてもいいことにし、部屋をまるまる貸し出すオプションも加えた。この頃にエアベッドの条件を外して「Airbnb」として潜在市場を広げた。
デモの日が近づき、サイトに人が集まる兆しが見え始めた。予約数が上がり始め、1日20件を記録した。売上は週1000ドルになった。3人は潜在顧客が存在する優良市場を見つけ、同時にその市場を満足させられるプロダクトを生み出した。そして、これまで売り込んだ投資家にはことごとく相手にされなかったのに、ベンチャーキャピタル界の名門セコイアが投資してくれた。このことが決定打となった。