ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引で、有罪判決を受けた村上ファンドの村上世彰氏の半世紀。その投資哲学や日本の問題点などが語られています。
■投資デビュー
子供の頃、預金通帳に印字された数字が増えていくのを見るのが好きだった。父の仕事は投資家だった。いつも「お金は寂しがり屋なんだ。みんなで戯れたいから、どんどん1ヶ所に集まってくるんだよ」と言っていた。そう聞いて子供心に「もっとお金を貯めたら、もっと増やせるんだ」と信じ、できる限り貯金をしていた。
自分で株への投資を始めたのは、小学三年生の時だ。ある日、父が百万円の帯付きの札束を置いて、こう言った。「いつも小遣いちょうだいと言うが、今百万円あげてもいい。但し、これは大学を卒業するまでのお小遣いだ。どうする?」 そこで大学入学までの10年間のお小遣いを一括前払いということで、百万円の現金を手にした。この百万円を元手に、株の投資を始めた。まず半分の50万円でサッポロビールの株を買った。それから毎日、新聞で株価をチェックし、経済面の記事も読むようになった。サッポロビール株は2年ほど持ち、10万円ほどの利益が出た。その後も、元手の百万円は順調に増えていった。
投資哲学は、すべて父から学んだ。「上がり始めたら買え、下がり始めたら売れ」という教訓は、今でも投資の基本になっている。
投資家は、投資先から資金が戻ってきた場合、必ず次の投資先を探す。より多くのリターンを得られる投資先を、常に探している。そこで日本の上場企業のように、何も生み出さないママの状態で資金を寝かせてしまうと、そのまま塩漬けになり、成長のために積極的に資金を必要としている企業へ回っていかない。そうやって市場は停滞し、経済全体が沈滞してしまうのだ。
日米の株式に対する投資家の評価の差は、投資家と企業との間で資金のキャッチボールができているかどうかの差だ。それはまさしく、コーポレート・ガバナンスへの理解と対応の違いだと言わざるを得ない。
著者 村上 世彰
1959年生まれ。村上ファンド 創設者 大学卒業後、1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までファンドを運営。 現在シンガポール在住の投資家。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊ダイヤモンド 2017年 7/22 号 [雑誌] (あなたのおカネの味方はどっち!? 金融庁vs銀行) 三省堂書店 岐阜店店長 渡邉 大介 |
エコノミスト 2017年 8/1 号 [雑誌] |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに――なぜ私は投資家になったか | p.9 | 8分 | |
第1章 何のための上場か | p.21 | 19分 | |
第2章 投資家と経営者とコーポレート・ガバナンス | p.49 | 22分 | |
第3章 東京スタイルでプロキシーファイトに挑む | p.81 | 18分 | |
第4章 ニッポン放送とフジテレビ | p.107 | 18分 | |
第5章 阪神鉄道大再編計画 | p.133 | 19分 | |
第6章 IT企業への投資――ベンチャーの経営者たち | p.161 | 18分 | |
第7章 日本の問題点――投資家の視点から | p.187 | 19分 | |
第8章 日本への提言 | p.215 | 19分 | |
第9章 失意からの十年 | p.243 | 20分 | |
おわりに | p.272 | 3分 |