世界の教育者から注目されている子供の「非認知能力の育成」はどのようにすれば良いのか。その課題と対策が紹介されている一冊。
■子どもの発達には非認知能力が重要
低所得層の子どもたちの成果を改善するためには、「非認知スキル」と呼ばれることの多い一群の要素「粘り強さ」「誠実さ」「自制心」「楽観主義」などが、決定的に重要になる。
この確信を支える科学的根拠は、神経科学や小児科学の分野にも見られる。過酷な、あるいは不安定な環境が、成長過程にある幼少期の子どもたちの脳や体に生物学的な変化をもたらすことが、最新の調査で示されている。そうした変化は、思考や感情を制御する能力の発達を損なう。これが損なわれると、情報を処理したり感情を制御したりすることが困難になり、学校生活をうまくこなすことが難しくなる。
非認知能力の高い子どもの方が学歴が高く、健康状態もいいという結果が出ている。また、一人親家庭になる可能性は低く、借金を抱えたり刑務所に入ったりする可能性も低い。
これらの気質が子どもの発達において重要でありながら見過ごされてきたとする見方が、特に教育の分野で広がり続けている。しかし、ここ何年か非認知的な要素について多くの議論がなされてきたにもかからわず、それを伸ばす最善の方法については結論が出ていない。
子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではなく、環境である。
一番の問題となる環境要因は、子供たちが経験する人間関係である。つまり、周りの大人が特に子供たちがストレスを受けている時にどう対応するかである。
子供が瞬間的なストレスに対処するのを助け、怯えたり癇癪を起こしたりした後に落ち着きを取り戻すのを手伝うことのできる親は、その後の子供のストレス対処能力に大いにプラスの影響を与える。
著者 ポール・タフ
ジャーナリスト 『ハーパーズ・マガジン』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』編集者・記者を経て、フリーのジャーナリスト。子供の貧困と教育政策を専門に多数の執筆・講演活動を行う。
帯 フローレンス代表理事 駒崎 弘樹 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
1 逆境 | p.13 | 5分 | |
2 戦略 | p.20 | 2分 | |
3 スキル | p.23 | 3分 | |
4 ストレス | p.28 | 2分 | |
5 親 | p.31 | 3分 | |
6 トラウマ(心的外傷) | p.35 | 3分 | |
7 ネグレクト | p.40 | 3分 | |
8 幼児期の介入 | p.45 | 3分 | |
9 アタッチメント(愛着) | p.50 | 5分 | |
10 家庭への介入 | p.57 | 5分 | |
11 家庭を超えて | p.65 | 5分 | |
12 学習のための積み木 | p.72 | 4分 | |
13 規律 | p.78 | 3分 | |
14 インセンティブ | p.83 | 3分 | |
15 モチベーション(動機づけ) | p.87 | 5分 | |
16 評価 | p.94 | 6分 | |
17 メッセージ | p.104 | 5分 | |
18 マインドセット(心のありよう) | p.112 | 4分 | |
19 人間関係 | p.118 | 5分 | |
20 学習指導 | p.125 | 6分 | |
21 課題 | p.135 | 4分 | |
22 ディーパー・ラーニング(より深い学習) | p.141 | 5分 | |
23 解決策 | p.148 | 4分 |
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