デジタル革命によって、労働力が余る時代になっている。今後、AIの進歩などによって、人の仕事が失われていく中で、社会はどのように課題を解決していくべきかを論じている一冊。
■雇用が右肩下がりに減り続けている
この20年間、豊かな先進国でインフレ調整後の賃金は伸び悩んでいる。国によっては20年以上前からだ。そして、労働者に配分される所得の割合は、事業主や資産家とは逆に下がっている。さらに労働者の間でも格差が大きく広がり、高額所得者に配分される所得の割合が激増している。
対照的に急成長する新興国の賃金は上がってきた。とはいえここでもやはり、資本家と一握りの高額所得者の給与に所得が集中するという2つのトレンドが懸念を生みつつある。そして、アメリカでは、現在職に就いているか求職活動中の働き盛りの成人男性の割合が、この30年間ほど右肩下がりに、一部では急激に落ちている。全男性では労働参加率が1990年の約76%から2015年には69%に減少した。このトレンドはアメリカに限ったものではない。ヨーロッパでは、25歳未満の成人の5人に1人が失業している。
多数の人々にとって、仕事は確実に手に入るものではなくなり、生活を保障してくれるほどの報酬を得られるものでもなくなっている。
「社会の一員とは誰か」。驚異的な新テクノロジーによってもたらされる社会共有の富、その分け前にあずかる権利を持つ人々の共同体を定義する必要に社会は迫られる。どんな条件が備わっていれば社会の一員と見なすのか、自分の居場所を勝ち取って維持するためにインサイダーは何をしなければならないのか、社会は選択を迫られるだろう。
この戦いはことのほか難しいものになるだろう。社会の再分配の性質が変わらなければならないからだ。デジタル革命の先にあるのは仕事の消滅だ。賢いソフトウェアと器用な機械と豊富なエネルギーのある世界では、人間の仕事は不要になるのが当然の帰結だろう。この大デジタル化時代の繁栄を今後支えていく制度を築くための戦いはすでに始まっている。大デジタル化時代の繁栄を築くとは、全ての労働者に経済成長の恩恵を受けさせる制度を構築することではない。経済成長に必要な仕事ができないために働かない人々が食べていける制度を構築することなのだ。
著者 ライアン エイヴェント
英『エコノミスト』シニア・エディター、記者 2007年より『エコノミスト』で世界経済を担当。現在は同誌のシニア・エディター兼経済コラムニスト。 『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』、『ニュー・リパブリック』、『アトランティック』、『ガーディアン』にも寄稿している。
帯 経済学者 トマ・ピケティ |
帯2 経済学者 ティム・ハーフォード |
帯3 ジョージ・メイソン大学 経済学教授 タイラー・コーエン |
エコノミスト 2017年 11/28 号 |
週刊ダイヤモンド 2017年11/25号 [雑誌] (山一・拓銀 破綻から20年 バブルで日本は何を失ったか) 作家 佐藤 優 |
週刊東洋経済 2017年12/2号 [雑誌](沈む神戸製鋼) BNPパリバ証券 経済調査本部長 河野 龍太郎 |
WEDGE |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
序章 | p.1 | 26分 | |
第1章 汎用テクノロジー | p.38 | 16分 | |
第2章 労働力の供給過剰をマネジメントする | p.60 | 19分 | |
第3章 もっと良い働き口を探して | p.86 | 15分 | |
第4章 希少性という利点 | p.108 | 18分 | |
第5章 情報処理する有機体としての企業 | p.133 | 22分 | |
第6章 21世紀のソーシャル・キャピタル | p.164 | 28分 | |
第7章 1%の人々限定の場所 | p.204 | 17分 | |
第8章 ハイパーグローバリゼーションと発展しない世界 | p.228 | 17分 | |
第9章 長期停滞という厄災 | p.252 | 16分 | |
第10章 賃上げがなぜ経済的に実現しにくいのか | p.276 | 17分 | |
第11章 労働力余剰時代の政治 | p.300 | 17分 | |
第12章 人類の富 | p.324 | 11分 | |
エピローグ | p.340 | 2分 |
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