資本主義という経済システムが抱える矛盾を解き明かしながら、やがて資本主義の崩壊がやってくると予想する一冊。
■2018年に日本経済は破綻する
2018年に中国発の金融危機を伴いながら世界経済は一気に厳しい状況になると予想される。経済の落ち込みはリーマン・ショックの時を上回る規模となる可能性が高い。
この金融危機と世界不況に対処するために、各国の政府と中央銀行は、リーマン・ショックの時と同様な対応を行うはずである。即ち、金融緩和と財政政策で金融危機を止め、景気を浮揚させようとする。しかし、注意しなければならないのは、前回のリーマン・ショックの時に比べて、各国とも政策発動の余地が狭まっていることである。どの国も政府債務残高が、リーマン・ショック直前の2007年の時と比べて大きく増えている。さらに政策金利も下がっており、金融政策の発動余地も狭まっている。
このような状況で、経済破綻する恐れがあるのが日本である。日本の政府債務残高は2016年時点でGDP比232%と、世界の中で飛び抜けて高い。さらに金融緩和策もこれまで大規模な緩和を実施しており、限界が見えてきている。日銀はついに禁じ手である国債引き受けに追い込まれる可能性が高い。そして、国債の暴落と同時に円が暴落して急激な輸入インフレが起こる。その結果、ハイパーインフレがやってくる。
産業革命以来、資本主義というシステムの下で経済は拡大してきた。しかし、資本主義という経済システムの下では、エントロピーが一方的に増大するだけで、エントロピーを減少させることが難しいために、次第に生産性は低下していき、やがて経済は成長の限界に突き当たることになる。
経済成長を続けていくためには生産性を上げなければならないが、そのためにはエントロピーを減少させる必要がある。しかし、資本主義はそれが難しいシステムであるところに、資本主義の矛盾と限界がある。
1つにつながって秩序を持っている「全体」を全てバラバラにして「個」に分けてしまう近代のパラダイムは、共同体をバラバラにして「個」となった構成員同士を商品交換によって結びつける経済システムを生み出した。これが資本主義経済である。
「商品」は元々、共同体の中から生まれたものではなく、共同体と共同体の間の交換という経済活動の特殊な形態から発生したものである。つまり、「商品」の性格に、すでに「分断」という近代のパラダイムが色濃く反映されており、資本主義はその商品が細胞になっている経済システムだからこそ、企業と消費者の対立、経営者と労働者の対立という特徴が現れる。
資本主義が崩壊するということは、このような対立・分断が解消されるということである。それは、元々1つにつながっていた「全体」をバラバラにして「個」にした近代のパラダイムを転換させることに他ならない。商品を仲立ちにして経営者と労働者が結びついていた「企業」という擬似「共同体」が、資本主義の崩壊と共に解体され、生産者と消費者、経営者と労働者が1つになった真正の「共同体」が、新たな経済システムの下で生まれることになると考えられる。
著者 野田 聖二
エコノミスト 1982年、大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。1994年、投資顧問会社(あさひ投資顧問)に出向し、チーフエコノミストとして9年間マクロ経済調査・予測を担当する。 2004年より、日興コーディアル証券FA(フィナンシャルアドバイザー)、2007年に独立し、エコノミストとしてセミナー講師や執筆業等に従事する。景気循環学会会員。
帯 脳科学者 茂木 健一郎 |
帯2 哲学者 小川 仁志 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 4分 | |
第1章 2018年から日本経済の崩壊が始まる「10大予言」 | p.17 | 24分 | |
第2章 歴史のサイクルから見た資本主義崩壊の兆候 | p.59 | 10分 | |
第3章 資本主義で生産性が上がらないのは自然法則が原因 | p.77 | 21分 | |
第4章 資本主義の崩壊を歴史の枠組みから解き明かす | p.113 | 16分 | |
第5章 秩序崩壊へと突き進む世界経済の諸相 | p.141 | 24分 | |
終 章 資本主義崩壊後に来るべき新たなシステム | p.183 | 18分 | |
おわりに | p.215 | 4分 |
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