伝説のハッカーが、超監視社会において、いかに政府当局からも突き止められずに、身元を消すかを紹介している一冊。おそらく麻薬の密売人や国家機密を持つスパイの人たちに有効な方法が紹介されています。
■監視社会におけるリスク
私たちの細かな個人情報の多くは、大抵、本人が気づかない内に収集・蓄積されている。他人がどれほど簡単にこうした詳しい情報をのぞき見ることができるかや、どこを見ているのかさえ、知らない人がほとんどだ。そして、自分が知らないからこそ、別れた妻や夫、親、学校、上司、政府にさえも、見られていない気でいられる。問題は、どこを探せばいいかを知るだけで、ほとんど誰にでも、そうした情報が丸々手に入ってしまうことだ。
今、私たちが手にしているプライバシーは幻だ。おそらく、数十年前に幻になった。デジタル監視が行われている国で暮らすのが危険なわけは、データ収集そのものにではなく、収集されたデータの使い道にある。自分には隠すことなどないと思っているかもしれないが、アメリカでは、小さなロブスターを持っているというだけで連邦犯罪になる。実際には無視されている地味な法律がいくつも存在し、知らない内にそれを破っているかもしれない。一方で、今の時代、ほんの少し手間をかけてデータの痕跡をたどるだけで、望めば誰にでも、そうした法律違反が証明できてしまうのである。
現在のデジタル世界で匿名性を守るには、多くの手間をかけ、絶えず注意を払わなければならない。匿名性をどれだけ必要としているかは、人によって違う。パスワードを守り、私用の文書を同僚から隠さなければならない人もいる。ファンにストーキングされていて、姿を隠さなければならない人もいる。不正を告発するために法執行当局から逃れなければならない人もいる。匿名性を守るためにどの程度の対策が必要かは、一人一人の目的に応じて決まる。
しかし、大まかに言えば、デジタル世界に残す痕跡を最小限に抑える方法を身につけることは誰にでもできる。具体的には、自宅の住所が写り込んだ写真を投稿したり、SNSのプロフィールに本当の生年月日や個人情報を載せたり、HTTPSエブリウェアなしでウェブサイトを見たり、シグナルのようなエンドツーエンド暗号化ツールを使わずに機密情報を電話やメッセージで伝えたり、OTRに対応していないテキストメッセージ・サービスを使ったり、PGPやGPGを使わずに機密メールを送ったりする前に、改めて考えるということだ。
著者 ケビン・ミトニック
ミトニック・セキュリティー・コンサルティング CEO 世界で最も有名な(元)ハッカーで、セキュリティー・コンサルタント。世界最高レベルのペネトレーション(侵入)テスト企業「ミトニック・セキュリティー・コンサルティング」の創業者兼最高経営責任者(CEO)でもある。 最高ハッキング責任者(CHO)を務める「KnowBe4(ノウ・ビフォー)」社は、企業従業員を対象に、セキュリティー判断の質を高めるための研修を提供している。
著者 ロバート・バモシジャーナリスト 世界レベルの情報システム・セキュリティー専門家資格「CISSP」保有者でもある。15年以上にわたりメディアに情報セキュリティー関連の記事を書いている。
帯 Japan Digital Design CTO 楠 正憲 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.12 | 7分 | |
第1章 パスワードは破られる! | p.22 | 20分 | |
第2章 あなたのメールは読まれている? | p.49 | 23分 | |
第3章 盗聴基礎講座 | p.80 | 15分 | |
第4章 暗号化しないなんて、裸同然だ | p.100 | 11分 | |
第5章 さあさあお立ち会い、この体を消してご覧にいれましょう | p.115 | 14分 | |
第6章 あなたのクリックはすべて監視されている | p.134 | 24分 | |
第7章 金を惜しめば、後悔することになる | p.166 | 18分 | |
第8章 すべてを信じよ。何も当てにするな | p.190 | 16分 | |
第9章 プライバシーがない? なんとかしろ! | p.212 | 22分 | |
第10章 逃げはできても、隠れはできない | p.242 | 14分 | |
第11章 おい、勝手に居場所をバラさないでくれ | p.261 | 20分 | |
第12章 インターネット監視 | p.288 | 17分 | |
第13章 上司があなたに隠していること | p.311 | 18分 | |
第14章 姿を隠すのは楽じゃない | p.335 | 25分 | |
第15章 FBIは獲物を逃さない | p.369 | 6分 | |
第16章 「不可視」の技術をマスターする | p.377 | 18分 |