動物とは異なる方法で環境に適応し、生存する仕組みを持つ植物。植物の生存メカニズムと様々な機能を紹介しながら、人類がいかに環境に適応していくべきかのヒントを与えてくれる一冊。
■植物と動物の違い
植物は、10億年前から4億年前までの期間に、動物とは正反対の決定を下した。動物が、必要な栄養物を見つけるために移動することを選択した一方で、植物は動かないことを選び、生存に必要なエネルギーを太陽から手に入れることにした。そして、捕食者や、地面に根付くことによる多くの制約に対抗するため、自らを適応させていった。生き残るためのただ1つの方法は、破壊をまぬがれる体を持つこと。つまり、動物とは全く違うやり方で体を作り上げることだった。
植物と動物の最も重要な違いは、集中と分散である。動物では各器官に集中している機能が、植物では全身に分散している。植物は、中心的器官である脳を持たなくても、動物以上の感度で周囲の環境を知ることができる。そして、土壌と空気の中の限られた資源を手に入れるために、植物同士で活発な競争を行なっている。さらに、環境の状態を正確に把握し、コストと利益のバランスを分析した上で、環境からの刺激に応じて、適切な振る舞いを決定し、それを実行する。
私たちが複雑で知的な生命として思い浮かべるのは、動物だけだ。植物には動物にある特徴が見当たらないため、私たちは、運動から認知にいたるまで、動物が持っている能力は植物に備わっていないと考え、ついつい植物を受動的な存在だと思い込んでしまう。だが、どんな植物を観察する時でも、動物とは異なる生物を観察しているのだということを忘れてはならない。
著者 ステファノ・マンクーゾ
イタリア・フィレンツェ大学農学部教授 フィレンツェ農芸学会正会員 フィレンツェ大学付属国際植物ニューロバイオロジー研究所(LINV)の所長を務め、国際的な「植物の信号と行動学会」の創設者のひとり。 La Repubblica紙で、2012年の「私たちの生活を変えるにちがいない20人のイタリア人」のひとりに選ばれている。
帯 タレント いとうせいこう |
帯2 ジャーナリスト 森 昭彦 |
週刊東洋経済 2018年5/12号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.11 | 4分 | |
第1章 記憶力 ~脳がなくても記憶できる | p.17 | 13分 | |
第2章 繁殖力 ~植物からプラントイドへ | p.37 | 15分 | |
第3章 擬態力 ~すばらしい芸術 | p.61 | 21分 | |
第4章 運動能力 ~筋肉がなくても動く | p.93 | 18分 | |
第5章 動物を操る能力 ~トウガラシと植物の奴隷 | p.121 | 21分 | |
第6章 分散化能力 ~自然界のインターネット | p.153 | 31分 | |
第7章 美しき構造力 ~建築への応用 | p.201 | 21分 | |
第8章 環境適応能力 ~宇宙の植物 | p.233 | 15分 | |
第9章 資源の循環能力 ~海を耕す | p.257 | 17分 |