ベストセラー作家、森博嗣による読書論。
人はなぜ本を読むのか、本を読むことで何が得られるのか、といった読書とは何かを論じている一冊。
■速読は意味がない
文章を読んでも、本当の意味は理解できない。意味が理解できた時に、初めて文章が読めたことになる。しかし、多くの一般読者は、文章をそのまま鵜呑みにしていて、その意味を自分の頭の中で展開していない。展開していなければ、つまりちらりと見た程度の体験となる。いわば、新幹線の車窓からの風景のようなもので、もの凄いスピードで流れていく。その風景は、どれほど頭に入っているだろうか。本を速読することは、ただ文字をざっと目で追っただけの体験であり、本当に「読んだ」とはいえない。
近頃では「読みやすい」本が人気がある。簡易な文章で、物語は速く展開する。しかし、文章を読んで、それを自分のものとして「展開」する行為が、本来の読書体験だったはずである。文章を読んで「わかる」というのは、多少は労力がかかる作業なのである。
結局、本というのは、人とほぼ同じだと言える。本に出会うことは、人に出会うことと限りなく近い。
著者 森博嗣
1957年生まれ。小説家、推理作家、工学博士。 国立大学の助教授として「粘塑性流体の数値解析手法」の研究を続ける傍ら、小説を執筆。1996年、『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞。 大学や研究所等が舞台となることが多く、作風も相まって理系ミステリィと評され、話題を呼んだ。広義の推理小説と呼ばれるジャンルを中心として執筆していたが、近年は、恋愛小説、絵本、詩集といった他分野にも進出している。
週刊東洋経済 2018年5/26号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.9 | 9分 | |
第1章 僕の読書生活 | p.25 | 23分 | |
第2章 自由な読書、本の選び方 | p.69 | 23分 | |
第3章 文字を読む生活 | p.113 | 20分 | |
第4章 インプットとアウトプット | p.151 | 17分 | |
第5章 読書の未来 | p.183 | 19分 | |
あとがき | p.218 | 3分 |