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2018/06/12更新

読書の価値 (NHK出版新書 547)

  • 森博嗣
  • 発刊:2018年4月
  • 総ページ数:224P

149分

1P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な

対象読者:

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何のために人は本を読むのだろうか?

人は、なぜ他者と話をするのか、なぜ他者を見るのか、他者を気にするのか、他者と知り合いになるのか、ということの理由と同じだ。社会には、自分一人が存在するのではない。たくさんの人間がいる。人は、社会という群れの中にあって、たくさんの人に出会う。話をし、議論をし、時には争いもする。

自分の行動は、自覚できる。しかし、他人の行動は、目の前にいなければ見ることができない。考えていることは、顔を見てもわからない。だから、他者に出会ったりした時に、話をすることになる。言葉でコミュニケーションをとる。つまり、自分の時間と空間内では経験できないことであっても、他者と出会うことによって、擬似的に体験できる。人を通して知ることができる。これが群れをなしている最大のメリットである。たくさんで集まっているほど、この情報収集能力が高まる。

この言葉によるコミュニケーションが、文字に代わったものが本である。結局、本というのは、人とほぼ同じだと言える。本に出会うことは、人に出会うことと限りなく近い。

本選びは、人選びと同じ

本選びは、結局は人選びであり、つまりは友達を選ぶ感覚に近いものだと思える。誰か面白そうな奴はいないか。こうした場合、2つの方向性が求められている。

①未知
あいつは、自分の知らないことを知っていそうだ。それを教えてもらおう、といった感じで本を選ぶ。

②確認
自分が考えていることに同調して欲しい。自分と同じものが好きで、同じ興味を持っている人と知り合いになりたい。

本の選び方で大切なことは、とにかく自分で選ぶことだ。人から聞いたから読むとか、誰かが勧めていたから読むとかではなく、自分の判断で選ぶこと。重要なのは、何を読むかという自分の「着眼」だ。

読書の価値

知識を頭の中に入れる意味は、その知識を出し入れするというだけではない。頭の中で考える時に、この知識が用いられる。物事を発想する時は、自分の頭の中から何かが湧いてくる。この時、全くゼロの状態から信号が発生するのではなく、現在か過去にインプットしたものが、頭の中にあって、そこから、どれかとどれかが結びついて、ふと新しいものが生まれるのである。知識を人に語れるからとか、そういった理由以上に、頭の中に入った知識は、重要な人間の能力の1つとなるのである。

発想というのは、連想から生まれることが多い。連想のきっかけになる刺激は、日常から離れたインプットの量と質に依存している。そして、その種のインプットとして最も効率が良いのが、おそらく読書だ。

本には日常から距離を取る機能がある。本を開き、活字を読み始めるだけで、一瞬にして遠くまで行ける感覚がある。時間を遡ることも容易だし、自分以外の人物の視点でものを見ることもできる。