「メディアはメッセージである」「グローバル・ビレッジ」等のフレーズで、1960年代に時代の兆児となったマーシャル・マクルーハンを読み解く一冊。現在のインターネットにも通じるメディア論を展開していたマクルーハンのいうメディアの本質が紹介されています。
■メディアはメッセージである
マクルーハンは風刺の効いた警句をいくつも作っており、それらをさっと眺めるだけでもメディアについて考えさせられるが、これらのうち「メディアはメッセージである」という言葉は、マクルーハンのメディア認識の核になる命題とも考えられており、有名である。これはメディアが伝える内容(メッセージ)ではなくメディアの持つ本来の性質(メッセージ)を理解すべきだと主張するもので「メディアこそメッセージである」と言い換えた方がわかりやすいかもしれない。マクルーハンはこの言葉で、メディアを形作る前提を無視してメディアを中立的で無色透明なものと考え、内容ばかりに目がいく表層的な論議を戒めた。
またマクルーハンが言うメディアとは、人間の身体や感覚の拡張を助けるもの全般を指すかなり広い概念だ。彼はメディア自身の特性、つまりメッセージを読み解くことで、我々の社会や文明に対する洞察が得られ、それがひいては自らの拡張であるメディアの中に溺れた人間を解放してくれるのではないかという希望を抱いていた。
■マクルーハンとは
マクルーハンは「誰が水を発見したかは知らないが、それが魚でないことだけは確かだ」という言葉を好んでいた。それは物事の渦中にいる人には自分のことは分からず、外から見ている人にしか全体は客観的に把握できないという意味だ。そして魚は釣り上げられて、初めて自分が「水」というものの中にいたことを発見することになる。
マクルーハンが活躍した時代は、戦後にテレビという電子メディアが大いに普及した時期と重なり、そこには現在のインターネットが巻き起こしているような新しい変化が起きつつあった。マクルーハンは『メディア論』の中で、テレビに代表される電子メディアの表面の下に隠れた本質を見えるものにしようと試みることで、メディアというもの全般の正体を暴き出そうと下が、それを当時の人に納得させることはまだ難しかった。
著者 服部桂
1951年生まれ。編集者 1978年に朝日新聞に入社。1980年代の通信自由化の際、米通信系ベンチャー企業に出向。1987年から2年間、米MITメディアラボ客員研究員。 科学部を経て、出版局で「ASAHIパソコン」副編集長、「DOORS」編集委員、「PASO」編集長。1994年に新聞紙面で初のインターネット連載。その後、企画報道部でデジタル面、科学部でbeを担当。 2011年から同社ジャーナリスト学校シニア研究員。メディア研究誌「Journalism」編集を担当。 2016年に朝日新聞社を定年退職後フリーに。
帯 『WIRED』創刊編集長 ケヴィン・ケリー |
帯2 筑波大学 学長補佐 落合 陽一 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.1 | 4分 | |
第1章 メディアのパラドックス | p.9 | 42分 | |
第2章 マクルーハンの理解 | p.61 | 34分 | |
第3章 グローバル・ビレッジの未来 | p.103 | 34分 | |
第4章 21世紀のマクルーハン | p.145 | 28分 | |
マクルーハン100の言葉 | p.189 | 9分 |
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