技術の進歩によって、古代の骨から抽出した全ゲノムデータを解析することができるようになり、新発見が続いている。旧人類のゲノム分析から得られた人類の進化の歴史が紹介されている一冊。
■ネアンデルタール人との遭遇
人類のサブグループの1つである現生人類は5万年頃より後にユーラシア全域に広がって、他の人類を駆逐、あるいは絶滅させた。4万年前頃までは、世界には多様な旧人類が住んでいて、姿形は私たちを異なるものの、直立歩行し、私たちと共通する多くの能力を持っていた。
40万年前頃のヨーロッパで一番幅を利かせていたのは体の大きなネアンデルタール人で、脳は現生人類よりわずかに大きかった。
現生人類とネアンデルタール人との遭遇については、確かな科学的証拠がある。一番直接的な証拠は西ヨーロッパの例だ。西ヨーロッパでは3万9000年前頃にネアンデルタール人が姿を消したが、少なくともその数千年前に現生人類が西ヨーロッパに到達したことがわかっている。ネアンデルタール人と現生人類との出会いは、中東でも起こっていたのはほぼ間違いない。
人類の過去には1本の幹のような集団は存在しない。ずっと混じり合いが続いていたのだ。
著者 デイヴィッド・ライク
ハーバード大学医学大学院遺伝学教授 ヒト古代DNA分析における世界的パイオニア。2015年、「ネイチャー」誌で全科学分野における最も重要な10人のひとりに選ばれる(古代DNAデータ解析を産業規模の研究に発展させた功績により)。 マックス・プランク進化人類学研究所のスヴァンテ・ペーボのもとで、ネアンデルタール人とデニソワ人のゲノムプロジェクトの中心的役割を担った後に、古代DNAの全ゲノム研究に特化したアメリカで初の研究室をハーヴァード大学で開設、人種の交雑を専門に研究し、歴史の中で人種交雑が中心的役割を担ってきた様々なケースを発見してきた。 アメリカ科学振興協会ニューカム・クリーブランド賞、および革新的な研究に送られるダン・デイヴィッド賞(賞金約1億円)をペーボと共に受賞している(ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの交雑の発見により)。 マサチューセッツ工科大学とハーヴァード大学の合同研究所であるブロード研究所アソシエイト、および、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員。
帯 東京大学総合研究博物館研究事業協力者 更科 功 |
週刊エコノミスト 2018年08月14・21日合併号 |
帯2 カリフォルニア大学ロサンゼルス校社会科学部地理学科 教授 ジャレド・ダイアモンド |
帯3 サイエンスライター カール・ジンマー |
帯4 ケンブリッジ大学 元教授 コリン・レンフルー |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 ゲノムが明かすわたしたちの過去 | p.33 | 22分 | |
第2章 ネアンデルタール人との遭遇 | p.61 | 29分 | |
第3章 古代DNAが水門を開く | p.99 | 22分 | |
第4章 ゴースト集団 | p.129 | 22分 | |
第5章 現代ヨーロッパの形成 | p.157 | 25分 | |
第6章 インドをつくった衝突 | p.189 | 33分 | |
第7章 アメリカ先住民の祖先を探して | p.231 | 34分 | |
第8章 ゲノムから見た東アジア人の起源 | p.275 | 19分 | |
第9章 アフリカを人類の歴史に復帰させる | p.299 | 19分 | |
第10章 ゲノムに現れた不平等 | p.324 | 18分 | |
第11章 ゲノムと人種とアイデンティティ | p.347 | 29分 | |
第12章 古代DNAの将来 | p.384 | 13分 |
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