和菓子業界が縮小していく中で、急拡大してきた「たねや」社長が、その商売の哲学とこれまでの成功した要因を紹介している一冊。
■夏のたねや、冬の虎屋
夏は菓子屋の鬼門である。暑いと甘いものが食べたくなくなるし、甘党の人でも食べる個数が減る。これは和菓子、洋菓子で違いがない。お歳暮、クリスマス、正月などの集中する年末年始が、菓子屋の繁忙期である。そこから、ひな祭り、GWぐらいまでは和菓子が売れる。しかし、その後秋に栗が出てくるまでは閑散とするのが普通である。
たねやの先代の父は、これではダメだと考え、夏でも食べたくなる菓子を開発し、水羊羹や梅ゼリーが大ヒットした。関西と関東ではお盆がズレていることも幸いし、仏前にお供えする和菓子が両方の時期に売れた。夏向けの商品を充実させたライバルがいなかったこともあり、夏はたねやの独壇場になった。20年ぐらい前からは、デパートの方々から「夏のたねや、冬の虎屋」と言われるようになった。いまや1年間で最も売上が多いのが、5月連休明けから8月半ばまで。これは業界的に非常に珍しい。
さらに比較的弱かった1月と2月も、最近、クラブハリエ(洋菓子部門)のチョコレートが好調なことで、カバーした。和洋菓子を展開することで、売上が安定している。
■現代の近江商人
利益を追うことしか考えなければ、いつかは破綻する。目先の利益を追うのでなく、まずは相手が喜ぶことを考える。細く長くであっても、組織が永続することを優先する。ビジネス相手だけでなく、それ以外の人々の利益も考える。
社員にも常々「数字ばっかり見るな。お客様を喜ばせることだけ考えろ。お客様の顔だけ見ていれば、数字は後からついてくる」と言ってる。商いの基本はそこにあるというのが、我が家に伝わる教えである。
著者 山本 昌仁
1969年生まれ。たねやグループCEO 滋賀県近江八幡市、和菓子屋「たねや」創業家の十代目。19歳より十年間和菓子作りの修業を重ねる。25歳のとき全国菓子大博覧会にて「名誉総裁工芸文化賞」を最年少受賞。 2002年、洋菓子のクラブハリエ社長、2011年たねや四代目を継承、2013年より現職。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経トップリーダー |
週刊ダイヤモンド 2019年 9/7号 [雑誌] (大学 激変序列) 天狼院書店店主 三浦 崇典 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
まえがき | p.3 | 6分 | |
第一章 たねやはなぜウケたのか | p.17 | 26分 | |
第二章 なぜ世代交代は成功したか | p.63 | 29分 | |
第三章 ラコリーナの思想 | p.113 | 21分 | |
第四章 「三方よし」をどう生きるか | p.149 | 22分 | |
第五章 たねや流「働き方改革」 | p.187 | 25分 | |
第六章 変わるもの、変わらないもの | p.231 | 13分 |