50歳になると、体力も落ち、仕事や遊びが昔ほど面白くなくなったりする。50歳が感じる喪失感をいかに乗り越え、人生の後半戦を豊かに生きるかについて紹介している一冊。
■仕事の地位だけが人間の価値ではない
最近、役職定年という制度を導入する会社が増えている。ある年齢に達すると、能力や業績に関わらず部長や課長といった役職を解かれてしまう。私たちは、人生の積み重ねの中で得た人間としての価値と、組織における地位というものを重ね合わせる傾向がある。それが、下げられてしまう。自分の価値がないがしろにされたように感じ、人生の秋がひしひしと迫ってきたような思いにとらわれてしまうかもしれない。
ここで、自分のこれまでの努力と、その結果としての現在の地位との折り合いをいかに付けるかという問題が出てくる。寂しさ、虚しさをいかに受け止めるかということである。
大切なのは、たとえ市場における価値が低かったからといって、プライドが傷つく必要はないということ。「あなた」という人間としての価値を評価している訳ではない。今の経済社会がそういうシステムで動いているだけのことである。
50歳で直面する人生の危機を乗り越える方法の1つに「脱力」がある。50歳になれば、世の中とはどういうものか、既にわかっている。これからの人生で何が起ころうとも「今まで死なずにやってきたんだから、力んで迎え撃つというほどのこともないか」と鷹揚に構えることができるはずである。
50歳を越えて、やがて孤独が現実のものになる。どんどん友達付き合いが減ったり、子供が独立して家族の人数も減ったりしていく。そこで友達がいないことに不安を抱いてしまった瞬間に、本当に孤独感が強まってしまう。
むしろ心地よいのは誰とも知らない人との連帯感である。本、映画、音楽、読書によって、こういった関係性を作りやすい状況では、友達がいないことの孤独は、それほど大きな問題ではない。孤独への特効薬は、読書である。これは一人の時間を味わい尽くす贅沢な営みである。人生の深い意味がわかるということが、50歳からの何よりの良さである。
著者 齋藤 孝
1960年生まれ。明治大学文学部教授 教育スタイル論の提唱者として知られ『声に出して読みたい日本語』が260万部を超えるベストセラーとなり、同著で毎日出版文化賞特別賞受賞。 その後、専門の教育学、日本語教育学などの書籍からビジネス書、コミュニケーションを基礎とした関連書籍を多数執筆。
週刊ダイヤモンド 2018年 10/13 号 [雑誌] (新宗教の寿命 伸びる教団 縮む教団) 作家 佐藤 優 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 2分 | |
第1章 50歳クライシス | p.15 | 17分 | |
第2章 後悔・自責・嫉妬――マイナスの感情と折り合いをつける | p.47 | 12分 | |
第3章 人間ぎらいという成熟 | p.69 | 17分 | |
第4章 孤独の時代を越えて | p.101 | 13分 | |
第5章 最後の恋を夢見ない | p.125 | 10分 | |
第6章 喪失の悲しみ、そして自らの死への覚悟 | p.143 | 21分 | |
おわりに | p.181 | 5分 |
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