近年、飛躍的に研究が進み、明らかになってきた免疫システムの仕組みについて紹介されている一冊。ワクチンから癌治療まで、現代医療の基礎となっている免疫システムの仕組みを理解できます。
■複雑な免疫システム
ヒト生物学の中でも特に盛んに研究され、細部まで探求されているのが、外傷や感染に対する体の反応プロセスである。熱を帯び、赤く腫れ、押すと痛む。「炎症」症状が現れている時、皮膚の下では思いもよらぬ驚異的な光景が繰り広げられている。多種多様な細胞が、病原体に襲いかかり、体の損傷を修復し、闘いに散った病原体や細胞の残骸を片付けている。私たちが生存していられるのは、意識しなくても起こるこうした反応のおかげである。
私たちの体には免疫システムが備わっており、「体の一部ではないもの」を見つけて攻撃するようにプログラムされている。但し、人体の一部ではない「異物」だからといって、必ずしも免疫反応を引き起こす訳ではない。この重大な事実がはっきりと認識されるようになったのは、実はごく最近で、1989年のことだ。免疫システムの活性は常に変動している。いくつものサブシステムが複雑に絡み合い、絶えず状態を変えながら、幾重にも重なりあっている。
私たちの体の中では微小な病原体と免疫細胞が軍拡競争を繰り広げ、延々と闘い続けている。
著者 ダニエル・M・デイヴィス
英国マンチェスター大学免疫学教授 免疫細胞生物学において超解像顕微鏡を用いた研究が、一般読者向けの米国科学誌「ディスカバー」の「トップ100ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。 『適合性遺伝子(The Compatibility Gene)』は、2014年の英国王立協会科学図書賞の候補作、英国王立協会生物学図書賞の最終候補作となった。『美しき免疫力―人体の動的ネットワークを解き明かす』も2018年の英国王立協会科学図書賞の最終候補作に選出されている。
帯 サイエンス作家 竹内 薫 |
帯2 作家 森田 真生 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.11 | 7分 | |
第1章 免疫学の小さなほころび―自然免疫の発見 | p.22 | 26分 | |
第2章 獲得免疫の始動の仕組み―樹状細胞の発見 | p.57 | 28分 | |
第3章 免疫細胞のコミュニケーション―サイトカインの発見 | p.95 | 31分 | |
第4章 免疫システムの暴走―超大型新薬の登場 | p.137 | 28分 | |
第5章 揺れ動く免疫システム―熱・ストレス・リラックス法の影響 | p.176 | 21分 | |
第6章 免疫システムと時間の流れ―体内時計と加齢の影響 | p.205 | 21分 | |
第7章 免疫システムの番人―制御性T細胞の発見 | p.233 | 24分 | |
第8章 未来の薬―がん免疫療法の開発 | p.266 | 28分 | |
おわりに | p.304 | 2分 |
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