小さくても結果を優先する
就任当初は「逆風」だった。インタビューの際、一部分だけを切り取られて、誤解を招きかねないように報じられることもしばしば。会合に行けば、あえて年齢を聞かれることも頻繁にあった。
実績のない若者が認めてもらうためには、まずは小さくてもいいから結果を出すことが大切。結果を出さない限りは、何を言っても説得力がない。就任当初は特に、チャレンジを通じて「数字や結果を出すこと」にこだわった。
チャレンジを「成果が短期で出るもの」「中期で出るもの」「長期で出るもの」に仕分けし、同時並行的に進めていった。短期的に数字上の成果が期待できるものは、交流人口の増加。福岡市は第三次産業に9割の人が従事している特徴的な産業構造を持っている。多くの消費者に福岡に来てもらい、お金を使ってもらうことで街が潤う。そこで全国に先駆けて無料のWi-Fiを繁華街やすべての地下鉄の駅、主要な観光施設、商業施設などに整備した。
たくさんの観光客を乗せてくるクルーズ船の誘致にも力を入れた。政令指定都市である福岡市の場合、博多港の整備からクルーズ船の誘致までを県ではなく国と連携して行う。
国際コンペティションの誘致にも力を入れた。人が集まる国際会議やスポーツイベントにも積極的に手を挙げて、経済界も一緒になって「オール福岡」で誘致活動をした。
就任から3年間で市税収入増加率が全国の政令指定都市で1位になった。就任直前の3年間が11位だったので大きな飛躍だった。こうした成果を1つずつ積み重ねていくことで、次にやろうとすることへの「説得力」を増していった。
全体をよくする
福岡市民は2018年10月時点で約158万人。そのトップである市長という立場にはメンタル、心臓の強さが必須である。行政の世界は、一般的な民間企業とは違う。いろんな価値観の人が同じ街に住んでいるが、行政は行政サービスの対象者を選ぶことはできない。「うちの商品が嫌なら買わなくて結構」とは言えないから、いろんな立場や考え方の人に納得してもらう必要がある。あちらを立てればこちらが立たず、それは想像を超えるハレーションのど真ん中である。市役所の政策判断に反対する市民から市長が告発されることもしばしばある。
「あまり気にしすぎない」ということは、リーダーを長く続ける上で大切である。鈍感であることは自分を必要以上に追い込みすぎないコツである。もちろん、一人一人の意見は大切である。しかし、一人残らず賛成してもらうことは、現実的には難しい。「全員をよくする」のは極めて難しい。だから「全員をよくする」というよりは「全体をよくする」ことを考える必要がある。
常に「全員」と「全体」という考え方の整理をする。福岡市を考えていく上で「全体」をよくしていく、ということを考えている。