著者自らが、Amazonの倉庫やUberなど、最低賃金労働の現場に潜入し、その過酷な労働についての体験談を書いた一冊。
■アマゾン
サッカー場10面ほどの広さがあるその巨大な倉庫は、イングランド中部スタッフォードシャーの片田舎にあった。その場所に漂うのは、刑務所について想像するのと同じ雰囲気だった。ほとんどの規則はこそ泥を防ぐためのものだった。出入り口には空港と同じような大型のセキュリティ・ゲートが設置されており、シフト終わり、休憩前、トイレに行く時には毎回そのゲートを通らなければならなかった。巨大な金属探知機を通り、ポケットの中身のチェックを受けるには10〜15分はかかったものの、その時間は無給だった。
ランチ休憩は、10時間半のシフトのちょうど中間あたりにやってくる。煩わしいセキュリティ・チェックを終えると、従業員の男女は大きな食堂へと流れ込み、巣穴から飛び出す羽アリの大群のように広がっていく。この仕事の良いところは、従業員用の食堂の食事が比較的安いという点と、何台も置かれた自動販売機から無料で紅茶やコーヒーを手に入れられることだった。ベイクドポテトかフライドポテト、ドリンク1缶、チョコレートバー付きで4ポンド10ペンス(約615円)。
世界金融危機の後、自営業者が100万人以上も増えた。その多くが、インターネットなどを通じて単発の仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」という働き方を選んだが、彼らに労働者の基本的な権利はほとんど与えられていない。週5時間働けば、政府が定義する「失業者」には含まれなくなる。しかし、そのような仕事で家賃を払うのは至難の業だ。たとえフルタイムの仕事に就いていたとしても、バラ色の未来が保証されている訳ではない。近年のイギリスで続く所得の減少は、ここ150年で最も長期にわたるものだ。
ジャーナリスト 現地で影響力のある左翼系ウェブサイト“Left Foot Forward”の元編集者。大手紙インディペンデントやガーディアン、ウォール・ストリート・ジャーナル等にコラムを寄稿。
WEDGE |
帯 ジャーナリスト 横田 増生 |
週刊東洋経済 2019年5/11号 [雑誌](最強私学はどっちだ? 早稲田 vs. 慶応) 甲南女子大学教授 林 雅彦 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.7 | 7分 | |
第1章 アマゾン | p.17 | 54分 | |
第2章 訪問介護 | p.99 | 51分 | |
第3章 コールセンター | p.177 | 48分 | |
第4章 ウーバー | p.251 | 46分 | |
エピローグ | p.321 | 7分 |
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