エンジニアという職種はどういうもので、どういう考え方をするものなのかを紹介している一冊。過去の失敗から教訓を得て、技術を進歩させていくというエンジニアリング的な考え方がわかります。
■失敗は成功以上に技術の進歩をもたらす
設計、すなわち、これまでには存在していない何ものかをつくる、という考えが、エンジニアリングの中核にある。エンジニアリングを理解する上の核心は「失敗」だ。失敗を避けることが、エンジニアリングの最大の目的だからだ。だから、凄まじい大惨事が起こったら、それは、つまるところ設計の失敗である。だが、そういう惨事から得られる教訓は、世界中で破損することなく使われている機械や構造物を全部合わせたよりも、ずっとエンジニアリングの知識を進歩させるのに役立つ。
事実、失敗がきっかけとなってはじめて、成功事例が次々と積み重ねられるようになり、その結果、安全のためのゆとりを多めにとるようになり、その結果、新たな成功の時代がやってくる。
エンジニアリングの成功とは、すべてその始まりは、失敗なしに何ごとかを成し遂げたいという願望に発するものと想像してよい。
誰一人として、失敗から学ぶことを欲する者はいない。しかし、我々は成功からは、技術の現在の水準を越えて大きく前進することを学ぶことはできない。
成功した構造上の考え方が失敗に転落し、一方惨憺たる失敗が機縁となって、革新的で新たな挑戦を呼ぶ構造の発展を促すというのは、設計についてまわる矛盾である。しかし、設計の最も主要な目的が失敗の回避にあることが理解されれば、この矛盾は理解される。ある構造が失敗すれば、それはそのもとになった仮説に対する反証となり、何をしてはいけなかったかを議論の余地なく示してくれる。
著者 ヘンリー・ペトロスキ
1942年生まれ。デューク大学教授 専門は土木工学、失敗学。1968年イリノイ大学で博士号を取得し、同大学やテキサス大学を経て現職。精力的に執筆活動を続けている。
帯 ビジネスブックマラソン編集長 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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1章 人間であるということ | p.1 | 10分 | |
2章 人間は転びながら成長する | p.13 | 11分 | |
3章 遊びから学び実人生から学ぶ | p.26 | 13分 | |
付録「親方の自慢の傑作」オリバー・ウェンデル・ホームズ作 | p.42 | 7分 | |
4章 エンジニアリングとは仮説である | p.51 | 13分 | |
5章 成功とは失敗を予見すること | p.67 | 11分 | |
6章 設計と旅行の共通点 | p.80 | 11分 | |
7章 設計と文学の共通点 | p.93 | 11分 | |
8章 事故は起こるのを待っている | p.106 | 12分 | |
9章 安全を数字であらわせば | p.121 | 15分 | |
10章 割れ目が突破口になる | p.139 | 13分 | |
11章 バスのフレームとナイフの刃 | p.155 | 13分 | |
12章 間奏曲―水晶宮の成功物語 | p.171 | 20分 | |
13章 橋は落ちてはまた架けられ | p.195 | 14分 | |
14章 探偵エンジニアリングとエンジニアリング・フィクション | p.212 | 16分 | |
15章 計算尺からコンピュータへ―忘れ去られる昔のやり方 | p.232 | 15分 | |
16章 混沌の中を見通す人 | p.250 | 12分 | |
17章 設計には限界がある | p.265 | 12分 |