世の中は「良し悪し」の問題で割り切れるものではなく、「好き嫌い」である。『ストーリーとしての競争戦略』の著者が、他人からの良し悪しではなく、自分の好き嫌いを基準にすることの大切さを説いています。
■好き嫌いと良し悪し
好き嫌いとは「良し悪し」では割り切れないものの総称である。好き嫌いと良し悪しは、いずれも何らかの価値観を捉えている。但し、この2つは普遍性という連続軸の上で対照的な位置関係にある。
個人的な好き嫌いを超えたところにあるのが普遍的な良し悪し。普遍的な価値観を個別的な方向に寄せていくと、国や地域や組織に固有の「文化」になる。文化は本来的にローカルなものだ。ある境界の内部では共有された価値、つまり良し悪しとして認識されている。しかし、境界を越えて外に出てしまうと、もはや良し悪しとしては通用しない。文化というのは、その中にいる人にとっては心地よい。しかし、文明ほどの普遍性はない。
文化をさらに個別性の方向に寄せ切ると、個人の好き嫌いとなる。当然のことながら好き嫌いは人によって異なる。
戦略とは、競合他社との違いをつくるということ。その時点でみんなが「良い」を思っていることをやるだけでは、他社と同じになってしまい、戦略にならない。
当事者が心底好きで面白いと思っていることを突き詰めた結果としてユニークな戦略が生まれる。
商売に限らず、世の中の9割は好き嫌いで成り立っているのが本当のところである。「良し悪し」「コレクトネス」では割り切れない。しょせん「蕎麦かうどんか」という話である。好き嫌いは人それぞれ、他人と自分が違うのは当たり前だし、人のことを気にする必要はない。但し、他社の好き嫌いを尊重する。筋違いの批判や余計な介入や無駄な説得をせず、気持ちよく放置する。そういう社会が成熟した良い社会である。
著者 楠木 建
1964年生まれ。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授 一橋大学商学部助教授、同大イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専門は競争戦略。
週刊ダイヤモンド 2019年 4/20 号 [雑誌] (NETFLIXとナベツネとコンテンツの未来) 三省堂書店有楽町店主任 岡崎 史子 |
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 7分 | |
第1部 「好き嫌い」で仕事をする | p.23 | 59分 | |
第2部 「好き嫌い」で会社を見る | p.117 | 70分 | |
第3部 「好き嫌い」で世の中を見る | p.229 | 57分 |