学力の向上を重視する現在の学校教育では創造性が育たず、多くの子供たちに力を与えることができない。生徒と教師の関係性にこそ、教育の本質があると説き、画一化された学校教育の改革を訴える一冊。
■学力向上を重視する教育改革
現代の教育標準化運動は全世界に起こっている。教育水準を上げるというのは良い考えのように思える。しかし、一体何の基準なのか。どうしてその基準にするのか、どうやって基準を守らせるのか。
教育改革運動には、基礎学力(読み・書き・算盤)の向上、学力向上、STEM教科(科学、技術、工学、数学)、大学進学という四大目標がある。教育標準化運動はとりわけ学力水準の向上を目指している。しかし、学業成績は教育のほんの一部でしかない。特に言葉や数を用いたある種の解析的な論理的思考や命題的知識と一般的に呼ばれている知識に重点を置いている。
教育標準化運動は生徒たちを仕事の世界に向けて備えさせ、海外の競争相手に挑むことが目的ともされている。そのためSTEM教科に重点が置かれている。そして、大学進学が今や世間では高校教育の最終目標とみなされている。
■教育の目的
学校文化は、次の教育目的を果たすべきである。
①経済的目的:教育は、生徒が経済的な責任を持ち、自立できるようにしなければならない。
②文化的目的:教育は、生徒が自国の文化を理解し、その真価を認め、異文化の多様性を尊重できるようにするべきである。
③社会的目的:教育は、青少年を活発で思いやりの心を持つ市民へと育てなければならない。
④個人的目的:教育は、青少年が内的世界と外的世界に向き合えるように手助けすべきである。
従来のカリキュラムはほぼ完全に外的世界のみに重点を置いており、内的世界にはあまり注意を払っていない。その結果が、倦怠感、無関心、ストレス、いじめ、不安感、鬱病、中退といった形で日々現れている。これらは人間としての問題であり、人間としての対応が必要だ。
著者 ルー・アロニカ
1958年生まれ。作家 編集者を経て作家となる。
著者 ケン・ロビンソン1950年生まれ。英国ウォーリック大学 名誉教授 英国ウォーリック大学で教育学教授を12年間務め、現在は名誉教授。英国「創造的教育・文化教育諮問委員会」委員長、シンガポール政府顧問を歴任、北アイルランドの和平プロセスの一環として創造性、経済開発の戦略策定をするなど、創造性とイノベーション、能力開発に関して世界的に活動している。 TEDカンファレンスでのプレゼンテーション「学校教育は創造性を殺してしまっている」は、TED史上最高の5000万再生超。 2013年「Thinkers 50(世界の経営思想家トップ50)」選出。
帯 人権運動家 マララ・ユスフザイ |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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イントロダクション | p.4 | 11分 | |
第1章 基本に立ち返る | p.23 | 24分 | |
第2章 新しいメタファーを見つける | p.55 | 26分 | |
第3章 学校を変える | p.89 | 18分 | |
第4章 生まれながらの学習者 | p.113 | 23分 | |
第5章 教える技 | p.143 | 30分 | |
第6章 学ぶべき価値があることとは | p.183 | 27分 | |
第7章 試験の問題 | p.219 | 21分 | |
第8章 校長のための教育方針 | p.247 | 21分 | |
第9章 家庭で教える | p.275 | 18分 | |
第10章 環境を変える | p.299 | 25分 | |
あとがき | p.332 | 4分 |
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