知識を創造するプロセスを現象学という無意識のプロセスを扱う学問の観点から、解説している一冊。前半に現象学、後半に知識創造経営をテーマにしています。
■情報処理から知識創造へ
情報は量を客観的に計算できるが、知識は個人が情報を主観的に意味解釈した上で獲得するもの。そして、真の意味で実践的な知識を生み出すには、人間が外界や他者と関わり合う中で、情報を自ら選定し、感知し、解釈し、実践し、身体化しなければならない。
絶えず変化する環境の只中で、外界や他者から何かを感知しつつ、それらを意味付けることによって、自分なりの「現実」を作り出し映し出すのが、人間の「心」である。感覚・知覚・思考が行為と直結し、身体を媒介に環境とオープンに相互作用する「身体化された心/拡張された心」という現象学の影響を受けた脳科学のアプローチが今、主流になりつつある。
経験の積み重ねによって培われる「本質直観」という人間特有の能力は、帰納でも演繹でもなく、創造的思考の根源だと言われるアブダクションである。
人間は、状況の細部を、動く身体を使って感じ、状況に応じて解釈し、全体と往還しながら新しい意味をつくり出し、新しい解を見つけ出す能力を持っている。未来を想像し、創造する力は、人間にしかない。
著者 野中 郁次郎
1935年生まれ。一橋大学名誉教授 早稲田大学特任教授 カリフォルニア大学バークレー校経営大学院ゼロックス知識学特別名誉教授 知識経営の生みの親として知られている。英語で出版された『知識創造企業』は多くの賞賛と賞を受賞し、『ハーバード・ビジネス・レビュー』にもその論文は掲載された。 これ以外にも、多くの著作が英語で出版されており、アメリカで知られる数少ない日本人経営学者であるほか、近年中国などでも知られる存在となっている。 理論の特徴は、知識がもっとも重要な経営資源とよばれる「知識社会」においていかにして知識を上手く経営するかというところにある。
著者 山口 一郎1947年生まれ。東洋大学 名誉教授 1994年ボッフム大学にて哲学教授資格取得。1996~2013年まで東洋大学教授、現在、東洋大学名誉教授
帯 早稲田大学ビジネススクール准教授 入山 章栄 |
帯2 脳科学者 茂木 健一郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 3分 | |
対談 経営学を「カッコ」に入れよ | p.13 | 11分 | |
第1章 現象学は欲張りな学問 | p.31 | 13分 | |
第2章 本質直観という方法 | p.49 | 17分 | |
第3章 先入観を「カッコ」に入れる | p.73 | 9分 | |
第4章 感覚と知覚は何が違うか | p.85 | 14分 | |
第5章 「現在」の成り立ちを問う | p.105 | 19分 | |
第6章 現象学・脳科学・仏教 | p.131 | 16分 | |
第7章 二重の相互主観性 | p.153 | 34分 | |
対談 戦略とは「生き方」である | p.185 | 10分 | |
第8章 SECIモデル | p.201 | 17分 | |
第9章 相互主観をどう育むか | p.225 | 17分 | |
第10章 集合本質直観の方法論 | p.249 | 21分 | |
第11章 「物語」と「物語り」 | p.279 | 17分 | |
第12章 本質直観の経営学 | p.303 | 33分 | |
対談 日本人の集合本質直観の力 | p.349 | 11分 | |
おわりに | p.364 | 1分 |
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