我々は人工生命を創り出すことはできるのか。人工細胞を作るのに必要な仕組みと研究の最前線をわかりやすく紹介している一冊。
■生命の材料
生命を構成している重要な物質の代表は、量的に多い順番から、水、タンパク質、核酸(DNAとRNA)である。大腸菌の場合、水は全体の70%、タンパク質は15%、核酸が7%を占めており、これだけで92%。あとは脂質や炭水化物などが続く。これは人間など他の生物でもほぼ同じだ。
地球上の水の起源も、誕生時から既にあったという説と、後から彗星や小惑星に運ばれてきたとする説などあるが、いずれにしても生命が生まれる時には存在したとする。問題はタンパク質と核酸だ。2つとも炭素を含む有機物(有機化合物)であり、分子量の非常に多い高分子(高分子化合物)である。簡単には生まれない。
タンパク質はアミノ酸からできている。生物が使っているアミノ酸は20種類で、それらが鎖のように数十から数百も繋がっている。数個程度繋がったものは「ペプチド」と呼ばれ、タンパク質とは区別されることが多い。一方の核酸は「ヌクレオチド」という単位分子が、やはり鎖のように数百から一億以上も繋がってできている。そのヌクレオチドは「ヌクレオシド」という単位分子と「リン酸」からできている。ヌクレオチドは「核酸塩基」と「糖」からできている。
「生命1.0への道」は、一本の紐や縄のイメージである。何本もの繊維がより合わされているやつだ。それは過去へと辿っていくにつれて、少しずつほどけていく。繊維の一本一本がばらけていき、その繊維自体もまた、さらに細かい繊維に分かれて、最後は煙のように見えなくなってしまう。
そうした繊維の一本は、例えばアミノ酸からタンパク質ができていく過程だったり、核酸塩基からRNAができていく過程だったり、脂質から袋のような構造体ができていく過程だったり、あるいは鉱物の表面でATPのようなエネルギー源ができていく過程だったりする。
どれが先に始まったということはない。それぞれが絡み合い、お互いに影響し合っていくうちに、だんだんと一本の紐によりあわさっていく。その途上で、あちこちに「生命0.1」や「0.2」「0.5」などが生まれていったのだろう。最後は様々な種類の「生命0.9」が集まって、お互いに支え合い、補っていたはずだ。どこかの時点で、しっかりと「紐」と呼べる状態になる。それが「生命1.0」誕生の瞬間だ。
著者 藤崎 慎吾
1962年生まれ。作家、ノンフィクションライター 科学雑誌『ニュートン』編集室に約10年間在籍。1999年に『クリスタルサイレンス』で作家デビュー。早川書房「ベストSF1999」国内篇1位となる。 現在はフリーランス。ノンフィクション作品、小説など著書多数
週刊東洋経済 2019年10/19号 [雑誌](ビジネスに効く 最強の健康法) サイエンスライター 佐藤 健太郎 |
PRESIDENT(プレジデント)2019年11/15号(「腰痛、ひざ痛、関節痛」治療のウラ側) 京都大学大学院教授 鎌田 浩毅 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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本書の起源 | p.9 | 10分 | |
第一章「起源」の不思議 | p.23 | 18分 | |
第二章「生命の起源」を探す | p.49 | 30分 | |
第三章「生命の起源」をつくる | p.93 | 52分 | |
第四章「生命の終わり」をつくる | p.169 | 58分 | |
第五章「第二の生命」をつくる | p.253 | 25分 | |
本書の未来 | p.289 | 8分 |
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