店づくりの成功モデルが転換する
近い将来、アナログ時代の仕組みが一掃されたら、お店の人の働き方も変わってくる。これから求められるのは、人間にしか出せない「ぬくもり」や「気遣い」である。それはロボットにはできない。
テクノロジーがもたらすものは、単なる効率化や、合理化ではない。本来の「おもてなし」という原点に立ち戻るチャンスである。これまで人間の能力だけでは実現できなかった「高度なおもてなし」ができるようになる。
重要なのは、テクノロジーを使って「お客様にどんな体験をしてもらいたいのか」という目的を考えていく視点である。
勝ち抜ける飲食店の思考
あらゆる飲食店は「商品」「場」「人」という3つの要素から成り立っている。この3つがテクノロジーによって、解体し始めているのが、現在の状況である。この3つの要素の内、どこに価値を置き、どこで勝負をするのかを念頭にお店を設計することが、これからの飲食店には求められる。
3つとも70点では勝つことができない。平均点のぼんやりとしたコンセプトでは、数多ある飲食店の中に埋没してしまう。残り2つは30点で構わないので、1つは120点を目指すことが重要である。
①「商品」特化型サービス
「UberEats」は、完全に商品に特化して設計することで急成長している。「シェフの派遣サービス」も商品特化型である。
②「場」特化型サービス
最近は、東京タワーの見えるタワーマンションの一室などを借り、食事とお酒を持ち込むという楽しみ方が広がっている。「Airbnb」や「スペースマーケット」など、スペースを貸し借りするサービスとの競争も意識せざるをえない。
③「人」特化型サービス
「キッチハイク」というアプリでは、気軽に食事会に参加したり、自分で主催することができる。
テクノロジーを利用して、3つの要素の組み合わせで、様々なアイデアが出てくる。但し、「商品」だけで勝つのは難しい時代だということは理解しておくべきである。今の飲食店は、どんなお店もそこそこ美味しい。だからこそ、単なる美味しさだけではない価値が必要である。
一方、比較的、誰でも勝ちやすいのは「場」と「人」である。この2つのどちらかを軸にするのが、商売としては勝ち筋を見つけやすい。近年、外食関係者の間で再評価が進んでいるのが「スナック」である。スナックは「人」のみに特化した飲食店の代表的存在である。これからの時代をサバイバできるのは「お客様が深く共感し、長期的な関係性を築くことができるお店」である。常連さんに愛され、支えられている、スナックのようなお店である。
1回きりの来店でいくら使ってもらえるかという短絡的な「点」ではなく、生涯にわたってトータル何回来店してもらえるかという「線」でとらえる発想がカギになる。