中国からインドにも急速に広がっているアリババのビジネスの本質とは何か。アリババの前最高戦略責任者が、アリババの競争優位性を解説している一冊。
■アリババは中国版アマゾンではない
今日、アリババは世界最大のリテール・コマース会社となった。中国のプラットフォームでは1000万社以上がアクティブな出店者として営業し、4億人を超えるアクティブバイヤーと取引する。中国で運営する小売市場の流通総額の合計は0.5兆ドルを超える。
アリババが中国版アマゾンだという認識は誤っている。アマゾンと異なり、アリババは伝統的な意味での小売業ですらない。仕入れもしなければ在庫も持たず、配送は外部のサービスプロバイダーが担っている。
アリババは小売業にかかわる全ての機能を果たすために、出店者、マーケティング会社、サービスプロバイダー、配送会社、メーカーからなるオンライン上の大規模でデータドリブンなネットワークを調整する会社だ。つまり、アメリカでアマゾン、イーベイ、ペイパル、グーグル、フェデックス、あらゆる卸売会社、メーカーが果たしている機能、さらに金融の機能の一部を加えたものを担っている。テクノロジーを活用して、中国の何千という企業の活動を調整し、これまでとは全く異なるインターネット時代ならではのビジネス・エコシステムを構築している。
■競争優位性の源泉が変化した
中国企業はネットワーク・コーディネーションを生かしやすい。つまり、企業組織を構築するより、様々な事業主体をインターネット上でシームレスに結合させやすい状況にある。国内産業の多くはインフラが比較的貧弱で、支配的プレーヤーも少ないことから、インターネット上で産業そのものを再構築する余地が大きい。
ネットワーク・コーディネーションとデータインテリジェンスという2つの要因、そして両者が組み合わさった時の威力は、あらゆる地域の新旧あらゆる産業に有効だ。企業にはネットワークとデータが支配する時代に応じた新たな戦略的アプローチが必要である。
著者 ミンゾン
アリババ前最高戦略責任者 経営大学院INSEADの准教授だった2006年、アリババCEOのジャック・マーから直々にスカウトされ、同社に参画。2017年までアリババの最高戦略責任者として、4000億ドル企業として世界へと飛躍するのに貢献する。 現在は、マー前会長らが設立したアリババ教育機関・湖畔大学のトップを務める。2002年に設立された長江商学院(CKGSB)初代教授7人の1人。
帯 アルファベット前会長 エリック・シュミット |
帯2 ペイパル創業者 ピーター・ティール |
PRESIDENT(プレジデント)2019年1/3号(信じてはいけない! 健康診断) |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 章 アリババが最も面白いケーススタディである理由 | p.13 | 16分 | |
第1章 「陰」と「陽」のビジネスモデル | p.35 | 11分 | |
第2章 「陽」としての「ネットワーク・コーディネーション」 | p.49 | 25分 | |
第3章 「陰」としての「データインテリジェンス」 | p.79 | 18分 | |
第4章 意思決定を自動化する | p.103 | 18分 | |
第5章 C2Bへ | p.125 | 28分 | |
第6章 「点」か「線」か「面」か | p.159 | 21分 | |
第7章 組織と戦略をセルフチューニング(自己調整)せよ | p.187 | 21分 | |
第8章 クリエイティビティのためのマネジメント革命 | p.213 | 29分 | |
第9章 スマートビジネスの未来 | p.249 | 13分 | |
日本語版スペシャル・エディション著者ミン・ゾン氏との一問一答 | p.265 | 7分 |