チームをコミュニティに育て上げるコーチの必要性
企業の成功にとって、イノベーションを実現するスマート・クリエイティブと呼ばれる人材を生かす環境と同じくらい重要な要素がある。それは、様々な利害をまとめ、意見の違いは脇に置いて、会社のためになることに個人としても集団としても全力で取り組む「コミュニティ」として機能するチームだ。
個人より集団の業績を優先する人たちのチームは、そうでないチームに比べ、一般にパフォーマンスが高い。従って、社内でライバル同士からなるチームをコミュニティに変え、足並みを揃えて共通の目標に向かわせることが重要になる。
チーム・ファースト
マネジャーは「管理、監督、評価、賞罰を中心とした伝統的なマネジメントの概念」を超えて、コミュニケーション、敬意、フィードバック、信頼をもとにした文化を醸成しなくてはならない。このすべてをコーチングを通して生み出す。マネジメントのスキルは人に任せられるものも多いが、コーチングは違う。これこそが、ビルが教えてくれた一番大切なことだ。
彼はマネジメントの技術を磨き、単純な行動の積み重ねにより業務を強化することの大切さを力説した。人材を最優先し、強力に業務を押し進めるマネジャーは、部下によって「リーダー」と見なされる。そうしたマネジャーは、リーダーの地位を与えられるというよりは、自らの行動を通してリーダーの座を勝ち取るのだと、ビルは信じていた。
彼は思慮深く一貫したコミュニケーションの手法を持っていた。決断力を重んじ、力のあるマネジャーは議論のフェーズが終わったと判断すれば、自ら決断を下すべきだと信じていた。優れた企業の核には優れたプロダクトとチームがあり、それ以外のすべては、これらの核を支えるものでなくてはならないと信じていた。
彼は人間関係が信頼の上に築かれることを理解し、一緒に働く人たちの信頼と誠意を得るために力を注いだ。じっくりと耳を傾け、思い切り率直になり、彼らの可能性を彼ら自身よりも信じた。チームを何よりも重要と見なし、「チーム・ファースト」の行動を重視し、どんな問題にぶつかっても、問題そのものよりも、まずはチームについて考えた。最も深刻な問題を見つけてど真ん中に引っ張り出し、まずはそれに対処するようチームに促した。舞台裏で行動し、廊下での立ち話や電話、1on1ミーティングでコミュニケーションギャップを埋めた。リーダーに、特に困難な状況では先陣に立つようハッパをかけた。
多様性を重んじ、職場でありのままの自分でいるよう教えた。彼は人を愛した。自分がつくったコミュニティや参加したコミュニティに愛を持ち込んだ。そして、職場に愛を持ち込んでもいいのだと人に教えた。