企業が競争優位を維持し続けるには何が必要なのか。過去に後発企業によって破壊的なダメージを受けた企業の事例や、先行優位性を維持し続ける企業の事例などをもとに、どうすれば企業は競争優位を保てるのかという原則を紹介している一冊。
■永続的な優位性を築くことはできるのか
優位性が揺るがないような、独自のポジショニングを追求しても、それは幻想に過ぎない。知的資産やポジショニング、ブランド認知、生産規模、そして流通ネットワークすらも、長時間の競争に耐え得るものではない。どんな価値提案も、それにどれほど独自性があっても、脅かされないことはない。良いデザインや優れたアイデアも、それを企業秘密にしても、特許があっても、結局は真似される。
こうした状況の下で、長期にわたって成功するための唯一の方法は「リープ(跳躍)」することだ。先行企業はそれまでとは異なる知識分野に跳躍して、製品の製造やサービスの提供に関して、新たな知識を活用するか、創造しなければならない。そうした努力が行われなければ、後発企業が必ず追い付いてくる。
先行企業がリープしないのは、企業幹部らが現在の事業の目標達成に関して、大きなプレッシャーを受けているからだ。長期的な観点で良いと思われることは、短期的には犠牲を伴う。
■自社の核となる知識を再評価する
業界の知識が成熟していくと、後発企業が追い付いてくる。後発企業は古くからの資産を抱えていないため、元々先行企業より低コスト構造である。そのため、後発企業から先行企業に競争圧力がかかる。
この流れを回避するためには、幹部が自社の基盤となる知識、核となっている知識を再評価する必要がある。一見逃れられない状況を回避するには、まず自社がどこにいるのかを認識することから始める。自社にとって、どの知識分野が最も重要なのかを自問する。
■時間の余裕があるうちに実験する
業績的な危機が訪れると、それが実際のものでも単なる予想でも、トップが突然の方向転換を行う場合がある。こうした突然の変更は、失敗した場合の挽回の余地が残されておらず、大きなリスクを伴う。従って、まだ時間に余裕があるうちに、小さな賭けを少しずつ試してみる方が良い。実際にどこにリープすべきかがわかる。
成功してきた企業幹部は行動を好む。重要なのは、ゆっくりとした動きを知らせるシグナルを騒音と区別することだ。正しいシグナルに耳を傾けるためには、忍耐力と規律が必要だ。チャンスをつかむためには、必ずしも最初に動くのではなく、最初に正しく理解することが求められる。
著者 ハワード・ユー
IMD(スイス・ローザンヌ)教授 同スクールのエグゼクティブ向けコース、AMP(Advanced Management Program )ディレクター。専門は戦略とイノベーション。洞察に富むケーススタディーには定評がある。
帯 ハーバード・ビジネススクール教授 クレイトン・クリステンセン |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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イントロダクション | p.2 | 16分 | |
第1章 「日米ピアノ戦争」の教訓 | p.28 | 23分 | |
第2章 新たな知識分野へLEAPする | p.60 | 23分 | |
第3章 セルフ・カニバリゼーションを恐れるな | p.92 | 25分 | |
第4章 ユビキタスな環境を味方につける | p.128 | 32分 | |
第5章 人工知能を味方につける | p.172 | 31分 | |
第6章 マネジメントにクリエイティビティを | p.214 | 34分 | |
第7章 知識を行動に変えるために | p.262 | 22分 | |
エピローグ | p.292 | 12分 |