従来の非効率性を数値化で変革する
デジタル技術によって、ビジネスそのものを「変革」することができなければ、デジタルトランスフォーメーションと呼ぶことはできない。技術への取り組み方が変わることで、業務プロセスや業態そのものが変化することが、デジタルトランスフォーメーションの本質だ。その変化にもいくつかのパターンがある。
最もわかりやすい例は、業務フローが変化することによって、労働負担が軽減されるパターンだ。最新のシステムに入れ替えることで、ワークフローが変わり、新しいビジネスの可能性を生み出し、変化の礎となる。
過去のやり方の非効率的な部分が「数字」で見えることで、これからどうすべきなのか、どういう変化をしていくことでより良い変化がもたらされるのか、ということに社内全体の意識が向かうようになる。
この「数値化」を伴う部分こそが、現在のシステム導入が担う大きな意味である。特にこの点は、Eコマースの発達によって大きく変化した部分である。デジタルトランスフォーメーションの成功例がEコマースに多いのは、数値化の恩恵が見えやすいビジネスだからである。
従来の販売店でも「何が」「いつ」「いくつ売れた」という情報は、POSデータによって数値化できていた。しかし、そのデータはあくまで「販売時」のものに限られる。実際に買った商品に「どう辿り着き」「他のどの商品と比較した上で」買ったのか、購入以前の情報は全く不明である。Eコマースでは、購入に至るまでのページ間の移動が正確に把握できるため、「どう辿り着き」「他のどの商品と比較した上で」買ったのかを詳細に知ることができる。Eコマースやアプリサービスには、顧客の行動を客観的なデータ(数字の積み重ね)」として可視化しやすいという大きな特徴がある。
現場から経営層まで数字を見る
デジタルトランスフォーメーションを起こせるのは、Eコマースだけではない。どんな業種においても、顧客との接点は多様化しているし、従来は伝わってこなかった数字が得られるようになっている。例えば物理的な店舗でも、カメラによって人の動きを把握したり、無線タグや画像によって棚から商品が「いつ」「どう動いたか」を可視化したりする技術の研究開発が進んでいる。
あらゆる産業における物流から生産まで、それぞれの分野に特有の「デジタルによる働き方の変化」が生まれてきている。多くのビジネスにおいて、これまで、数字を逐一見ているのは現場担当者だけだった。現在は、数字から直接、かつ自動的にビジネス動向の解析が行える。生の数字を特定の経営指標へと読み替えて活用することが可能になった。だからこそ、経営層から現場担当者まで、全員が同じ数字を見てビジネスを行うことができる。結果として、ビジネスのスピードが変化し、企業の構造は大きく変わる。