自国通貨を自由に発行できる国家はいくらでも通貨を発行できるため、財政破綻しない。その根拠として、世界各国で話題となっているMMT(現代貨幣理論)の基本を説明している一冊。
■批判されるMMT
MMT(Modern Monotary Theory)は、現代における貨幣の成り立ちを検討した上で、現実経済の動きや経済政策のあり方について分析を行う理論の呼び名であることから、「現代貨幣理論」と訳される。MMTは経済学における理論体系の1つだが、経済学の中では「非主流派」とされる一部の経済学者たちによって体系化が進められてきた比較的新しい理論であるため、これまで一般の話題に上がることはほとんどなかった。しかし、2019年に入り、欧米や日本をはじめとして、国際的に大きな話題となっている。
一方で、MMTは並み居る大物経済学者からは、「正統派経済学の教義から外れているだけでなく、政府債務の膨張やハイパーインフレなどの危険な結果をもたらしかねない、異端の誤った経済理論」だと批判されている。その批判の根底には、現代の資本主義経済を動かす重要な要素である「貨幣」に対する両者の見解の著しい違いがある。ケインズを出発点とするMMTの貨幣観と新古典派経済学を基礎とする主流経済学の貨幣観は、地動説と天動説ほど異なる。
日本や米国のように「通貨主権」を有する政府は、自国通貨建てで支出する能力に制約はなく、デフォルトを強いられるリスクもない。財政赤字や国債残高を気にするのは無意味である。
政府にとって、税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない。政府が先に通貨を支出しない限り、民間部門は税金を納める事も、国債を購入することも論理的に不可能である。税金は所持、国債は金利にはたらきかけ、経済を適正水準に調整するための政策手段である。
政府は「最後の雇い手」として、希望する人々全員に、一定以上の賃金水準で就業する機会を約束することができる。この「就業保証プログラム」は、「完全雇用と物価安定」という公共目的に資する、強力な経済安定装置である。
著者 島倉 原
1974年生まれ。経済評論家 クレディセゾン主任研究員 アトリウム担当部長、セゾン投信取締役などを歴任。経済理論学会および景気循環学会会員。 現在、京都大学大学院工学研究科博士課程(都市社会工学専攻)に在籍。会社勤務の傍ら、積極財政の重要性を訴える経済評論活動を行っている。
帯 京都大学大学院教授 藤井 聡 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 3分 | |
序 章 MMTはなぜ注目されているのか | p.15 | 14分 | |
第一章 貨幣の本質 | p.38 | 20分 | |
第二章 預金のメカニズム | p.68 | 18分 | |
第三章 主権通貨国における政府の機能 | p.95 | 31分 | |
第四章 MMTの租税政策論 | p.144 | 7分 | |
第五章 機能的財政論 | p.154 | 10分 | |
第六章 就業保証プログラム | p.170 | 15分 | |
第七章 日本は財政危機なのか | p.194 | 13分 | |
第八章 日本経済には何が必要なのか | p.214 | 25分 | |
第九章 民主主義はインフレを制御できるのか | p.252 | 16分 | |
おわりに――MMTをどのように生かすべきか | p.277 | 13分 |
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