起業家であり、物理学者でもある著者が、熱力学の「相転移」の考え方をもとに、組織の集団行動の変化を解説。様々な事例をもとに、イノベーションを育むために必要な組織マネジメントのルールを紹介しています。
■組織も相転移する
最も重要なブレークスルーは「ルーンショット」、即ち誰からも相手にされない、一見ばかげたアイデアやプロジェクトから生まれる。そうしたブレークスルーをテクノロジーや製品や戦略に転換するには、大規模な集団が必要である。チームや企業など、何らかのミッションを持つ集団の行動に相転移の科学を当てはめることで、ルーンショットを素早く上手に育てるための実践的ルールが明らかになる。
同じ人から成るチームや企業の振る舞いが突然変わる。同じ人物が保守的な振る舞いでプロジェクトを潰すこともあれば、起業家として皆んなの先頭で旗を振ることもある。同じようなパターンは「相転移」と呼ばれる一風変わった物質現象の本質でもある。同じ分子が時に液体のように、時に個体のように振る舞う。多は異なり。物質の相は変化する。相がわかれば、突然変化する理由だけでなく、その変化をどう制御すれば良いかもわかる。
■ルーンショットを生み出す「ブッシュ・ヴェイル ルール」
①相分離を実行する
・アーティストとソルジャーを分離する
・「相」に合わせたツール(手段)を用意する
・死角に注意する。製品と戦略の両タイプのルーンショットを育てる
②動的平衡を築く
・アーティストとソルジャーを平等に愛する
・テクノロジーそのものではなく、トランスファーを管理する(モーゼではなく庭師に成る)
・橋渡し役となるプロジェクト推進者を任命・育成する
③システムマインドを育む
・組織がその選択をした理由を問い続ける
・意思決定プロセスの改善方法を考え続ける
・結果重視のチームにシステムマインドを植え付ける
④マジックナンバーを増やす
・政治利益を減らす
・ソフトエクイティ(非金銭的報酬)を利用する
・プロジェクト・スキル適合度を高める(ミスマッチを見つける)
・中間層を機能させる(ミドルマネジャー向けの歪んだインセンティブを減らす)
・ナイフを使った戦いに銃を持ち込む(最高インセンティブ責任者を雇う)
・マネジメントスパンを微調整する(ルーンショット集団には広く、フランチャイズ集団には狭く)
■ルーンショットを目指す上で必ず心がけること
・「偽の失敗」に気をつける
・最悪の発言に好奇心をもって耳を傾ける
・結果重視マインドではなくシステムマインドを用いる
・精神、人間関係、時間を常に意識する
著者 サフィ・バーコール
物理学者 バイオテク起業家 マッキンゼーでコンサルタントとして3年働いた後、抗がん剤を開発するバイオテク企業を共同創業。IPOを実現し、CEOを13年務める。2008年、E&Yニューイングランド・バイオテクノロジー・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる。2011年、科学顧問としてオバマ大統領の諮問機関(PCAST)に招聘され、米国の科学研究の未来に関する提言をまとめた。
帯 マイクロソフト創業者 ビル・ゲイツ |
帯2 プリンストン大学名誉教授 ダニエル・カーネマン |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
プロローグ | p.3 | 5分 | |
はじめに | p.10 | 11分 | |
第1章 ルーンショットが導いた大戦の勝利 | p.30 | 30分 | |
第2章 ルーンショットの驚くべき脆さ | p.74 | 22分 | |
第3章 2種類のルーンショット──トリップとクランドール | p.106 | 33分 | |
第4章 エドウィン・ランドと「モーゼの罠」 | p.155 | 29分 | |
第5章 「モーゼの罠」の回避 | p.198 | 35分 | |
第6章 相転移I──結婚、森林火災、テロリスト | p.259 | 26分 | |
第7章 相転移II──マジックナンバー1 5 0 | p.298 | 17分 | |
第8章 四つ目のルール | p.323 | 27分 | |
第9章 なぜ世界は英語を話すのか | p.364 | 28分 | |
おわりに | p.406 | 25分 |
実践 行動経済学 [Amazonへ] |