ルーンショットを生み出す法則
天才起業家がそのアイデアと発明によって長期帝国を築くという神話がまかり通っている。だが本当の意味で成功する起業家は、もっと謙虚な役割を演じる。彼らは個々のルーンショットを支持するというより、多くのルーンショットを育てるための優れた「構造」をつくる。先見性あるイノベーターというより、注意深い庭師に近い。ルーンショットとフランチャイズの両方に目を配り、一方が他方を支配することがないよう、それぞれが相手を促進・支援できるよう心がける。こうした庭師が築く構造は共通の原理を備えている。これを「ブッシュ・ベイル ルール」と呼ぶ。
①相分離を実行する
・アーティスト(リスクの高いアイデアを出す者)とソルジャー(成功を収め、堅実に成長している部分を担当する者)を分離する
・「相」に合わせたツール(手段)を用意する
・死角に注意する。P(製品)とS(戦略)両タイプのルーンショットを育てる
②動的平衡を築く
・アーティストとソルジャーを平等に愛する
・テクノロジーそのものではなく、トランスファー(行き来)を管理する(モーゼではなく庭師に成る)
・橋渡し役となるプロジェクト推進者を任命・育成する
③システムマインドを育む
・組織がその選択をした理由を問い続ける
・意思決定プロセスの改善方法を考え続ける
・結果重視のチームにシステムマインドを植え付ける
相転移後の停滞や低迷を防ぐこと
動的平衡:強 × 相分離:強 = ブッシュ・ベイル バランス
動的平衡:強 × 相分離:弱 = カオス
動的平衡:弱 × 相分離:強 = 罠(強制or放置)
動的平衡:弱 × 相分離:弱 = 停滞
停滞している組織を適度に分離し、均等な力を持つルーンショット集団とフランチャイズ集団(相分離)が、プロジェクトやアイデアを双方向に継続的に交換している(動的平衡)状態に移行させることが重要である。
4つ目のルール
組織には臨界規模(マジックナンバー)がある。規模がそれ以上になると、プロジェクト重視から政治重視へバランスが変化する。この閾値以下だと、全社員がルーンショットを生み出そうと奮闘するが、閾値を超えると自身の昇進の重要性が高まり、政治がいきなり顔を出す。ルーンショットは軽んじられ、フランチャイズがもてはやされる。
M=ES*2F/G
M:マジックナンバー、E:エクイティ比率、S:マネジメントスパン、F:組織適合レベル、G:給与アップ率
典型的な集団構造の場合、マジックナンバーはおよそ150だ。政治重視の相にとらわれた150人を超える集団は、その構造を修正することによって、ルーンショット重視の相を取り戻すことができる。